今朝、日本の基礎的財政収支が2025年度も赤字となる可能性が高いと報じられました。基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)とは、国債費などを除いた政府の歳入と歳出のバランスのこと。日本のPBは長く赤字の状態が続いていますが、政府は、2025年度に黒字に転換することを目標としていました。税収の増加で達成目前とも言われてきたのですが、13.9兆円の補正予算等で達成が難しくなりました。

米国なども財政収支は赤字ですから、日本が突出しているというわけではありません。しかし日本の場合、議論を尽くした年度予算ではなく、期中の補正予算で歳出が大きく増えてしまうのが特殊です。もちろん、柔軟な財政対応が必要な時もあります。しかし、法人税収も過去最高になろうという時に昨年を上回る補正予算を組むというのはやはり疑問です。米国のように、もっと包括的に財政の在り方を議論する独立財政機関の創設などが求められるところでしょう。

しかしそういう議論は長年やってきても実現しないのが現実。我々市場参加者としては、この赤字続きのPBを所与のものとして、長期的に市場にどのような影響がありうるのか、イメージしておくことも必要だと思います。

第一に懸念すべきは、日本の信任の低下です。日本国債が格下げされれば、政府や企業の調達金利の上昇圧力が高まり、利益に影響を与える可能性があります。第二に、政府の各種産業支援・災害対応力の低下です。政府は海外からの対日直接投資を100兆円まで拡大するという目標を掲げていますが、国の補助金等の余力が減少すると、海外からの投資促進が思ったほどには進まない可能性もあるでしょう。第三に、これらを含めた総合的な要因による円の価値の下落です。

いずれも、今は極論に聞こえるかもしれません。しかし、現在欧州や米国でも財政が問題になる中で、かつ、日銀の国債購入額が減少する中で、政府債務対GDP比率が先進国最悪の日本が例外でいられるのかどうか…。5年10年単位で問題がなくても、財政赤字に伴う長期的なリスクを意識しておく必要は十分あると思います。