すると王は答える。「あなたがたによく言っておく。わたしの兄弟であるこれらの最も小さな者のひとりにしたのは、すなわち、わたしにしてくれたことなのである。」(マタイによる福音書25章40節)

◆先週、娘の学校のクリスマス・ウイッシングに列席した。静謐な雰囲気のなか、聖歌とタブロー(聖劇)でイエス・キリストの誕生を祝う。娘も高3になり、今年が最後のクリスマス・ウイッシングだ。感慨もひとしおである。今年のウイッシングのテーマは、「Share the blessing in our hands」。神様からいただいた祝福を人々と分かち合う大切さを伝えるものである。

◆決して「浮世離れ」したものではない。式のスピーチでは、今年の世界の紛争は59件と戦後最多であるとの報告があった。中高生であろうとも厳しい現実を直視している。ロシア=ウクライナ、ガザ=イスラエルだけでなく世界中の争いに心を痛め、平和を希求し祈る少女たちの姿がそこにあった。

◆僕はこっそりとスマホに目を落とした。その日はFOMC(米連邦公開市場委員会)を受けてNY株が大幅安となり、朝から日経平均も700円を超える急落となった。少女たちの讃美歌がホールに厳かに響きわたる傍らで、僕は下値に置いた僕の買い指値が次々とヒットされていくのを確認した。朝安の後、相場は急速に下げ渋った。「いいところで拾えた」。思わず笑みがこぼれた。

◆映画「ゴッドファーザー」の洗礼式の場面を思い出した。教会のパイプオルガンをBGMに殺戮シーンと洗礼の儀式が交互に描かれる。偽善ではない。神への敬虔な信仰心と残虐なマフィアの掟。世界の平和に祈りを捧げながら、激しく動くマーケットをリアルタイムでフォローする。どちらも共存するのが、現実の世の中なのだ。

◆スコット・ギャロウェイ著『一生「お金」を吸い寄せる富の方程式』はこう始まる。

<資本主義は改革者より既得権益者を、貧しい者より富める者を、労働より資本を優遇し、喜びや苦しみを不公平な方法で分配する。(中略)本書は、世の中のあるべき姿を提案するのではなく、現実の世の中の仕組みに関する真実を説き、そのシステムの中で成功するための最善策を提供する。>

現実の世の中は冷徹で残酷だ。だからこそ、「祈り」も「救い」も必要だが、その一方で自分自身も資本主義という弱肉強食の世界でサバイブする術を学ぶべきである。

◆明日はクリスマスイヴだ。世界の平和をともに祈ろう。そして我々自身の資産運用がうまくいくことも。God Bless You 神のご加護がありますように。メリークリスマス。