◆先日、当社の松本が、「ハロウィーンはもともとケルト人の大晦日である」と書いていた。ケルトの新年は11月から始まる。それをいうなら、お茶(茶道)の新年もこの時期である。「口切り」といって茶壺の口を切って詰めてある新茶を臼でひく。その新茶を振る舞うのが「口切りの茶事」である。また、11月から「炉開き」となる。4月までが炉の季節だ。これから本格的なお茶の季節を迎える。「口切り」がお茶の正月といわれる所以である。
◆米国では冬時間になった。11月の第一日曜日を境に夏時間から切り替わる。いろいろな暦が切り替わるこの時期、忘れてならないのが「株の季節」の到来である。小欄の第24回「夏至」で紹介したハロウィーン効果をご記憶だろうか。欧米株の半年リターンを調べると、10月末~4月末までの半年がダントツにパフォーマンスが良いことが知られている。どうしてなのかは諸説さまざまあるが、日照時間が関係していることは、ほぼ間違いがないであろう。
◆そして今年のハロウィーンは日銀による「ハロウィーン緩和」で世界的な株高となった。まさに株の季節を迎えるに幸先の良い口切りの儀式のようである。これから季節は冬へと向かうが暗くなる必要はない。この時期、案外明るい行事が多いのは、「冬来たりなば春遠からじ」という意味が背景にあるのだろう。
◆それは易経の「一陽来復」にも合致する。易では、10月に陰がきわまって11月に陽が初めて生じるとされる。悪いことが続いたあと、ようやく物事がよい方に向かうことの意味にも使われる。まさに今の日本株相場に相応しい言葉ではないか。本当に「一陽来復」を願いたいものである。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆