◆「ニューヨークはすごい!ニューヨークはアメリカじゃない!」 ミュージカル映画『ニューヨーク・ニューヨーク』の台詞である。その通りだ、ニューヨークはアメリカではない。多くのひとがこの街に惹きつけられて世界中からやってくる。世界一インターナショナルな都市である。「巨大な田舎(ドメスティック)」と言われる「アメリカ」とは確かに違う。

◆ひとびとがニューヨークに惹きつけられるのは、この街にはありとあらゆるものがあるからだ。美術館や博物館。最先端のファッションやレストラン。メトロポリタンのオペラやブロードウェイのミュージカル。あちこちにあるjazzのライブハウス。街の景観そのものも魅力的だ。摩天楼、セントラルパーク、ハイライン。ウィリアムズバーグ橋やブルックリン橋。ソーホーやビレッジの街並み。しかし、ひとびとが惹きつけられる一番の理由は、この街が発散しているエネルギーだろう。そのパワーを感じたくて、ひとはニューヨークを訪れる。

◆ニューヨークには多くのヘッジファンドが存在する。マンハッタンだけでなく、ヘッジファンドの聖地といわれるコネチカットのグリニッチまで含めれば、ここに存在するヘッジファンドは文字通り星の数ほどにのぼる。すなわち、世界のマーケットを動かす原動力はこの街にある。僕が8月下旬に書いたレポートのタイトルは「この先の相場は米国次第」。世界の中心はアメリカだから、アメリカの状況をつぶさに見ていくことが重要だ、と述べたが、訂正しよう。世界の中心はニューヨークである。ライザ・ミネリが歌って大ヒットした『ニューヨーク・ニューヨーク』の歌詞にはこうある。It's up to you, New York. New York! そう、すべてはニューヨーク次第なのである。

◆来週のFOMCでFRBは量的緩和(QE)の終了を決めるだろう。QE終了を控えて市場がナーバスになるのは当然である。それが足元のマーケット変調の根底にある。では、世界のマーケットを動かしているヘッジファンドはこのQEの終了をどう捉えるのだろう。それを彼らから直接聞くため、ニューヨークに行ってくる。情報の取得は一次情報が大切である。だからニューヨークの息吹に直に触れに行ってくる。ニューヨークで、歴史的なQEの終焉を迎えることになる。

◆この街にはありとあらゆるものがあると述べた。そう、マーケットを突き動かす、すべてがある。欲望も、恐怖も、歓喜も、悲観も、懐疑も、陶酔も。それらを感じに世界の金融の中心へ、秋深まるニューヨークに、今年もまた行ってくる。

来週はニューヨーク出張のため、「新潮流」はお休みです。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆