<<<<キャシー・ウッド氏「米国のヘルスケア情報を牽引する企業とその注目点」【中編】

ズームがマイクロソフトを引き離すと考える理由

岡元:ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ[ZM]について聞かせてください。市場ではズームの全盛期は過ぎたという見解が多いように感じますが、どう思われますか?

ウッド氏:私はズームの全盛期が過ぎたとは思っていません。ズームは、通信分野でのAIに関する最も重要な特許をいくつか持っています。先日ズームがサービスを開始した新プロダクトのチャットボックスは、営業部門で必要になるコミュニケーションを支援します。営業担当者が販売の際に「“うーむ”と言いすぎだよ」や「ここやここのポイントを伝えれば、販売につながるよ」とコーチングしてくれるのです。ズームは膨大な数のAIツールを発表し、マイクロソフト[MSFT]を引き離す可能性があると私たちは考えています。すでにクラウドにおける企業間コミュニケーションの分野では、マイクロソフトを引き離しています。

マイクロソフトは社内コミュニケーションでは誰よりも先を走っていますが、考えてみれば、社外コミュニケーションの方がより重要かもしれません。私たちが見る限り、ズームはその市場で40%のシェアを持っていますが、マイクロソフトはシェアを落とし13%まで下がっています。

通信分野は企業コミュニケーションの技術スタックの中で最大部分を占めており、その売上高は年間1兆3,000億ドルにのぼります。ズームの売上高は40億強ですから、これはズームにとって爆発的な成長のチャンスになると考えています。

キャシー・ウッド氏はエヌビディアをなぜ売却したのか

岡元:市場からも注目されていましたが、エヌビディア[NVDA]を売却した理由を教えてください。

ウッド氏:アーク・インベストの旗艦戦略のUCITS(欧州向け)ファンドにおいてエヌビディアを売却したというニュースばかりが報道されています。このファンドを開設した当初、私たちはエヌビディアを5ドルの時から保有し始め、同株が300ドル台半ばから後半まで上昇するまで持ち続け、トップ5に入る大きなポジションに育ちました。現在同株は400ドル台半ばから後半あたりです。4つのテーマ「フィンテック、デジタルトランスフォーメンション、メタバース、スペース」では依然保有していますが、イノベーション・プラットフォーム全体を含む旗艦戦略の運用戦略からは除外しました。

その理由として、私たちは、エヌビディア以外にも注目すべきAIプレイヤーを探していたということが挙げられます。AIに用いられるハードウェアにかかる金額に対し、AIに用いられるソフトウェアはその8~20倍の金額がかかります。ですからプラットフォーム、ソフトウェア・プラットフォーム、独自データを持つ企業を模索しているのです。

OpenAIや、メタ・プラットフォームズ[META]の基盤モデルであるLLaMA(大規模言語モデル)などの他の基盤モデルを見ると、コモディティ化が進んでいるのがわかります。これらはオープンソースです。このようなコモディティ化したプラットフォームのデータを利用し、専門的なデータや専有データと組み合わせるソフトウェア・モデルが勝者となるはずです。さきほどヘルスケアの分野でインビテとテラドック・ヘルスの話をしましたが、この2社は主要な勝者になると思います。

テスラの目標株を2,000ドルとしている理由

岡元:最後に、テスラ[TSLA]について教えてください。前回キャシーさんのお話をお伺いしたのは、2022年の12月でした。2022年にテスラの株価は大きく下落、2023年に入ってから株価は大きく上昇しました。キャシーさんは、テスラの目標株価を2027年に2,000ドルとしています。その目標を達成するためにテスラが今後どのように変化していくのか、また、自律走行でレベル5の技術を開発し、私たちが利用できるようになるのはいつ頃になるとお考えですか?

ウッド氏:テスラにとっては大規模言語モデルが自律走行で極めて重要と考えています。テスラが出した最新ソフトウェアのアップグレード、FSDのアップグレードを受けた人なら誰でも、大きな変化を実感できるはずです。

大規模言語モデルがその一助となったことは間違いないでしょう。テスラ株が現在の200ドル台半ばから2,000ドルかそれ以上になるためには2点ポイントがあります。私たちは現時点での予想および2028年の予測を立てますが、1年という期間で指数関数的な成長を遂げるだろうというのがその1点です。つまり、2026年から2027年にかけて、指数関数的な成長軌道の途中にいる企業に大きな変化が起こるということです。

私たちは電気自動車へのシフトは起こっていると知っていますし、私たちが起こるだろうと信じていた動きは加速しています。そしてテスラが私たちの期待する評価まで引き上がるために残された1点は自動走行です。最新アップデートを見て自律走行が相当現実に近づいたと思いました。

イーロン・マスク氏は「自律走行は年内には可能になる」と言うと思いますが、3年間そう言い続けてきました。しかし、サンフランシスコやその他多くの都市ではドライバーなしで自律走行するクルーズが実現しています。これはもはや夢物語ではなく、現実のものとなっているのです。テスラは現在、都市ごとにライドシェアネットワークで働く人の募集広告を出しています。そして、テスラが提供するのは電気自動車だけではありません。サイバートラック、セミトラック(トレーラー)、そしてロボットもあります。テスラが次のステップに進む際には、非常に人間的なヒューマノイドロボットが出てくるだろうと私たちは考えています。

それらを他の製造業にも販売できるでしょう。マスク氏は、「テスラは工場の製造業者だ」と言っています。自動車工場だけでなく、もっと多くの工場の自動化を支援する会社になりたいと考えているということだと思います。これは非常に大きなアイデアだと思います。

特に、ロボット、AI、エネルギー貯蔵の融合が進むことで、これら3つは自律移動に留まらず、自律工場のためのものにもなるでしょう。

岡元:キャシーさんが、将来テスラ株の売却を検討し始めるのはいつ頃になりそうですか。そのときには、テスラはどういう会社になっていて、時価総額はいくらになっていると思いますか?

キャシー氏:テスラ株はARK社のUCITS戦略に含まれており、そこでは最大のポジションです。報道では、私たちが利益を得るためだけに売却するという論調です。もちろん私たちは、利益確定のためにテスラ株の売却は行いますが、テスラ株については最大のポジションを維持しており、再び下降へのボラティリティが起き株価が下がった時には同社株を買い戻す、いつもそういった準備をしています。

私たちは、テスラが1996年のアマゾンのようになる可能性があると考えています。アマゾンが20年から25年にも渡り強気相場銘柄になるとは誰も思っていなかったでしょう。

私たちはテスラの成長は2034年まで続くと考えています。自律移動だけではなく、工場の自動化で世界の生産性をより高める約束をテスラが果たすことができれば、成長サイクルはさらに延長される可能性もあります。

アップル[AAPL]は時価総額3兆ドルを達成しましたが、テスラは、アップルをはるかに上回る大きな構想を持っていると思います。私たちが考えているように2030年には破壊的イノベーション関連銘柄の時価総額が200兆ドルになること、そして、テスラがそのうち5兆ドルから10兆ドルを占めていても驚かないでしょう。

岡元:日本の個人投資家にメッセージをお願いします。

キャシー氏:変化の正しい側に立ち、技術革新に対してリスクを取るということが重要なことだと思います。なぜなら変化は極めて速いスピードで起こり、インデックスはその変化に追いつけないからです。インデックス投資はすでに試行された銘柄を保有することになります。しかし、インデックス投資ではイノベーションで敗れ破壊されていく銘柄も同時に保有することになリます。従って、そうした破壊されることに対するヘッジを取ることも重要になってくると思います。

岡元:ありがとうございました。

※本記事は2023年9月7日に実施したインタビューを後日、編集・記事化したものです。