モトリーフール米国本社 – 2023年8月27日 投稿記事より

主なポイント

・エヌビディアの第2四半期決算は、ウォール街の予想を上回った
・会社側は第3四半期も成長が加速すると予想している
・売上高に対するバリュエーションは依然として割高

注目のAI関連半導体銘柄は買い時なのか?

半導体大手のエヌビディア[NVDA]は8月23日に、最新の四半期決算を発表しました。5―7月期(2024年1月期第2四半期)の売上高は前年同期比101%増の135億1000万ドルとなり、アナリスト予想を24億3000万ドルも上回りました。調整後1株当たり利益(EPS)は同429%増の2.70ドルで、コンセンサス予想に対して0.61ドルの大幅な上振れとなりました。

これらの数字はいずれも素晴らしいものですが、年初来で220%超上昇しているエヌビディアの株価に、さらなる上昇余地はあるのでしょうか。それを見極める材料として、エヌビディア株をめぐる4つの好材料と、1つの悪材料を見てみましょう。

1.人工知能(AI)市場がデータセンター事業に火をつけた

エヌビディアのデータセンター向けチップの売上高は、第2四半期の全社売上高の76%を占め、この割合は1年前の57%から上昇しました。データセンター向け売上高は前年同期比171%の急増となり、第1四半期の14%増や2023年度第4四半期の11%増から加速しています。

こうした爆発的成長の背景には、AI市場の急速な拡大があります。同社最上級クラスのGPUは、データセンターで複雑なAIタスクを処理するために使用されており、オープンAIのChatGPTを含むトップレベルの「生成AI」プラットフォームはすべて、エヌビディア製チップで動いています。調査会社のアライドマーケットリサーチによると、事業を合理化し、自動化し、加速させるために生成AIを活用したサービスを導入する企業が増えるのに伴い、生成AI市場は2023年~2032年の間に34%の年平均成長率(CAGR)での拡大が見込まれています。

エヌビディアは、データセンター向けGPU市場において脅威となるような競合に直面していないため、AI市場を獲得すればするほど、データセンター事業は猛スピードで成長し続けるとみられます。コレット・クレスCFOは先日のコンファレンスコールで、エヌビディアの「アクセラレーテッド・コンピューティングとAIプラットフォームに対する需要は、引き続き莫大であり」、市場の需要を満たすために「2024年まで各四半期に」これら製品の供給を拡大するとの見通しを明らかにしました。

2.ゲーム事業は成長を回復

エヌビディアはまた、PCゲーム用ディスクリートGPUにおいても世界最大手のメーカーです。ゲーム事業は第2四半期の全社売上高の18%にすぎず、パンデミック後のPC市場やゲーム市場の冷え込みを受けて低迷しています。暗号通貨市場が崩壊したことで、幻滅したマイナーから中古GPUが大量に市場に流入したことも、痛みをさらに悪化させました。

しかし、ゲーム向け売上高は第2四半期に前年同期比22%増となり、前年同期比で4四半期連続の減少にようやく終止符が打たれました。また、前四半期比で見ると、売上高は3四半期連続で伸びています。

企業側は回復の理由について、ノートPCやデスクトップPCで使われるGeForce RTX 40シリーズGPUの販売が好調だったことと、新学期シーズンにゲーム用ノートPC市場が力強く成長したことを挙げました。さらに、調査会社JPRによると、ディスクリートGPU市場におけるエヌビディアのシェアは、2023年第1四半期の75%から2024年第1四半期には84%に上昇する一方で、競合のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ[AMD]のシェアは24%から12%に低下しています。市場シェアの上昇は、PC購入者が、低価格ですが電力効率の低いチップを販売するAMDの戦略よりも、価格が高くても電力効率の高さを優先するエヌビディアを引き続き支持していることを示唆しています。

3.粗利益率は上昇

エヌビディアはデータセンターとゲーム向けGPU市場で圧倒的シェアを確保しているため、価格決定力も十分にあります。データセンター向けチップと抱き合わせで販売される利益率の高いソフトウェア・アプリケーションの拡大も、粗利益率を押し上げています。

そのため、第2四半期の調整後粗利益率は71.2%となり、前四半期の66.8%、前年同期の45.9%から大幅に上昇しました。第3四半期の調整後粗利益率はさらに上昇し、72~73%が見込まれています。

4.成長が再び加速する見通し

第3四半期について、会社側は売上高が前年同期比で約170%増加すると予想しており、3四半期連続で増収率は加速する見込みです。同社は利益予想を示していませんが、調整後EPSは3桁台後半の高成長となる見通しです。アナリストは、2024年1月期の通期売上高は前年比65%増、調整後EPSは147%増と予想しています。

エヌビディア株を巡るただ1つの悪材料は、バリュエーション

エヌビディアの予想株価収益率(PER)60倍は、急成長を考えると妥当に思えるかもしれません。しかし、時価総額は1兆1600億ドルであり、2023年株価売上高倍率(PSR)は26倍です。ちなみに、AMDのPSRは7倍、インテル[INTC]は3倍です。

そのため、「AIバブル」の崩壊、予期せぬ競争上の脅威、あるいは長期的な減速といった兆候があれば、エヌビディアの株価はすぐにも半減する可能性があります。ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ[ZOOM]やスノーフレーク[SNOW]の株価が急騰・急落したことを思い出してください。これらは、割高な急成長企業の売上成長が冷え込んだ途端に、強気派が一気に撤退することを明白に示しています。

エヌビディア株は買い時なのか?

エヌビディアの事業は依然として好調に推移しているため、株価のバリュエーションが高くても強気でいるのが賢明でしょう。しかし、AI市場が冷え込んだ場合に、ボラティリティが一時的に高まる可能性に備えておくことが必要です。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Leo Sunは、記載されているどの企業のポジションも保有していません。モトリーフール米国本社はアドバンスト・マイクロ・デバイセズ、エヌビディア、スノーフレーク、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社はインテルの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。