モトリーフール米国本社、2023年8月22日 投稿記事より
主なポイント
・第2四半期決算の好調を受けてアマゾン・ドットコムの株価は上昇。AWSの成長は安定している模様
・スノーフレークは企業規模拡大につれて、営業レバレッジが上昇
・マーケル・グループはバークシャー・ハサウェイにとって比較的新しい投資先だが、バークシャー・ハサウェイのビジネスモデルを踏襲して株主価値を生み出している
ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが保有する注目の3銘柄
ウォーレン・バフェット氏、あるいはバークシャー・ハサウェイ[BRK.B]の投資マネジャーであるトッド・コームズ氏やテッド・ウェシュラー氏が自社のポートフォリオのために株式を購入する場合、ほぼ例外なく、長期保有を意図しています。バフェット氏自身、「お気に入りの保有期間は永遠だ」としばしば明言しており、優良企業の株式を公正な価格で購入することを特に重視しています。
それを念頭に置いて、バークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中でも、特に長期保有する価値があると思われる3銘柄に着目します。
アマゾン・ドットコム[AMZN]:eコマースとクラウドコンピューティングの巨人
バフェット氏は以前、eコマースとクラウドコンピューティングの巨人であるアマゾン・ドットコムにもっと早く投資すれば良かったと嘆いていました。同氏がアマゾン・ドットコムに初めて投資したのは2019年初めのことで、それも部下である投資マネジャーの判断によるものでした。2023年6月30日現在、バークシャー・ハサウェイはアマゾン・ドットコムの株式を約1055万株(14億1000万ドル相当)保有しており、同社のポートフォリオを構成する55銘柄の中で23番目に大きいポジションとなっています。
驚くべきことに、アマゾン・ドットコムはこれまで、ほとんど苦労することなく大幅な増収増益を実現し続けてきました。8月上旬には、第2四半期決算が自社のガイダンスやウォール街の予想を楽々と上回ったことで、株価は急騰しました。第2四半期の売上高は前年同期比11%増の1,344億ドル、純利益は67億ドル、1株当たり利益(EPS)は0.65ドルとなりました。2022年第2四半期のEPSは0.20ドルの赤字でした。
営業利益は前年同期比で2倍超の77億ドルとなり、収益性の高いクラウドコンピューティング部門のアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)売上高が12%増加したことが寄与しました。注目すべき点として、アンディ・ジャシーCEOは、「顧客がコストの最適化から、新たなワークロードの展開に移行し始めたことにより、AWSの成長が安定してきている」との見方を明らかにしました。
アマゾン・ドットコムの株価は年初来で約56%上昇していますが、依然として2021年の高値を大きく下回っており、今後数年間は勝ち組であり続けると思われます。
スノーフレーク[SNOW]:意外なハイテク株を保有
バークシャー・ハサウェイのポートフォリオの中で、最も意外なハイテク株はクラウド型データウェアハウスのスペシャリストであるスノーフレークでしょう。この社名は2012年の創業時に、スノーフレーク(雪の結晶)は「クラウド(雲)の中で生まれる」ことから名付けられました。
バークシャー・ハサウェイは、スノーフレークが2020年9月に新規株式公開(IPO)した時に、1株当たり120ドルという公募価格で208万株強(約2億5000万ドル相当)を購入し、その後さらに約10億ドルを投じてIPO初日に付けた254ドル前後で別の株主から404万株を追加購入しました。
バフェット氏は以前から、上場初値前後で株式を購入することに否定的な姿勢を明らかにしていたため、これは同氏らしくない動きと言えます。そのため、この購入は部下の判断によるものではないかとの憶測を呼びました。いずれにせよ、バークシャー・ハサウェイは6月30日時点で約612万5,000株(9億ドル強)のスノーフレーク株を保有しています。総額で約3,490億ドルに上る同社のポートフォリオの中で、スノーフレークは0.3%を占め、55銘柄の中で29番目のポジションとなっています。
ここで、別の問題が浮上します。スノーフレークの株価が、2021年末に392ドルを超える過去最高値を付けた後、足元では当初のIPO価格に近い水準まで下落しているのはなぜでしょうか。
第1に、スノーフレークは、この2年間で大きく下落した多くの割高なバリュエーションのハイテク株の1つです。金利の上昇とマクロ経済の逆風が重なり、かつては利益を犠牲にしても売上成長を優先していればよかった企業も、利益を生み出していないと資金調達が困難になっていることから、ハイテク株は幅広く下落しています。
実際に、スノーフレークの2-4月期売上高は前年同期比48%増の6億2,360万ドル(製品売上高は同50%増)という驚異的な伸びを見せましたが、純損益は2億2,560万ドルの赤字という悲惨な結果となりました。
しかも、2024年1月期通期見通しでは、製品売上高は前年比34%増の26億ドルと、大幅な成長鈍化が見込まれています。成長が減速している企業に対して、当然ながら市場がこれほど割高なバリュエーションを容認するとは思えません。
では、スノーフレークに買い持ちする価値があると思われるのはなぜでしょう。
同社は莫大なキャッシュを生み出しており、また、企業規模が大きくなるにつれて、営業レバレッジが高くなる兆候が見え始めていると思われます。スノーフレークは2年前に、通期のキャッシュフローが初めてプラスになったばかりで、2022年1月期の調整後フリーキャッシュフロー(FCF)は通期で1億5000万ドルでした。
そして現在では、2-4月期の調整後FCFは、前年同期比46%増の、四半期で2億8,690万ドルまで増加しています。会社側の最新ガイダンスでは、2024年1月期の営業利益率はわずか5%ですが、調整後FCFは6億7600万ドル、調整後FCFマージンは26%が見込まれています。スノーフレークの営業レバレッジがキャッシュフローの継続的な成長だけでなく、真の持続的な純利益に繋がるのも時間の問題と思われます。
さらに、前述の通り、アマゾン・ドットコムが、AWSの顧客がここ数ヶ月の間にコストの最適化から新たなワークロードの展開にシフトしているとコメントしたことを踏まえると、スノーフレークが5―7月期決算発表(8月23日の予定)で、予想を上回る利益を発表してポジティブサプライズとなる可能性も十分にあります。
マーケル・グループ[MKL]:馴染みのアプローチを取る金融持ち株会社
バークシャー・ハサウェイが、中堅金融持ち株会社で「ミニ・バークシャー」とも呼ばれるマーケル・グループに初めて投資したのは比較的最近の話で、2022年5月でした。最新の提出書類によると、バークシャー・ハサウェイは6月30日時点でマーケル・グループ株47万1,661株(7億400万ドル相当)を保有しており、同社のポートフォリオの約0.2%を占める34番目のポジションとなっています。
バークシャー・ハサウェイと同様に、マーケル・グループも株主価値を一貫して生み出すために3つのアプローチを取っており、同社は、これを成長のための「3つのエンジン」と呼んでいます。具体的には、特殊保険と再保険事業、買収した多角的事業で構成されるマーケル・ベンチャーズ企業群、そして本稿執筆時点で84億ドルの価値を持つ投資ポートフォリオです。皮肉なことに、バークシャー・ハサウェイは現在、マーケル・グループのポートフォリオ全体の約13%を占める、最大の投資先となっています。
同社はまた、トム・ゲイナーCEO兼最高投資責任者(CIO)という、バフェット氏ばりの著名なバリュー投資家をトップに擁しています。投資に関する同氏の見解は、貴重な情報源として投資家から参考にされています。
多くのハイテク株が2021年末の高値を取り戻せていない中、マーケル・グループは8月上旬に3つのエンジンのすべてが好調な第2四半期決算を発表し、株価は過去最高値を更新したばかりです。
保険事業の保険料収入は前年同期比11%増の20億3000万ドルとなり、コンバインド・レシオは93%という健全な水準を維持しています(つまり、同社は保険料100ドルのうち7ドルが利益となっています)。金利上昇によってネット投資インカムは同75%増の1億7,000万ドルとなり、ネット投資利益は、株式ポートフォリオの評価額の上昇を反映して4億8,450億ドルとなりました。マーケル・ベンチャーズの営業利益は40%増加し、革製バッグブランドのブラーミン、観葉植物を手掛けるコスタ・ファームズといった製品事業で営業レバレッジが上昇したことが寄与しました。
とはいえ、マーケル・グループの3つのエンジンすべてが絶好調を維持するというわけではありません。しかし、インフレ率の上昇、マクロの逆風、市場の下落など、何らかの理由でエンジンの1つが弱体化したとしても、残りの2つのエンジンが相対的に強ければ、落ち込みをカバーすることはできるはずです。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットの元CEOのJohn Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Steve Symingtonは、マーケル・グループ、スノーフレークの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム、バークシャー・ハサウェイ、マーケル・グループ、スノーフレークの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。