2023年上半期の投資家売買動向

2023年上半期(1月~6月)のJ-REIT価格は、3月下旬の急落まで下落基調で推移し、その後は回復したもののボックス圏で推移した。東証REIT指数で見ると3月20日には1,750ポイントまで下落する局面もあったが、その後は1,850ポイントから1,880ポイントで推移した。

投資家の売買動向で見ると、外国人投資家の大幅な売り越しを投資信託と金融機関の買い越しが支える結果となっている。

【図表】主要投資家の差引売買金額(単位:億円)
出所:東京証券取引所公表資料を基にアイビー総研株式会社作成
※1 日銀を除外 ※2 自己売買

外国人投資家は、2022年下半期(7月~12月)と比較して売越額が拡大し投資部門では最大(757億円)の売り手となった。一方で投資信託の買越額は減少したが、最大の買い手(421億円)の状態が2半期続いた。さらに金融機関は買い越し(200億円)に転じ、証券会社の自己売買部門の買い越し(244億円)とともに2023年上半期のJ-REIT価格を支えた。

なお個人投資家の売越額が急減している点もプラス材料とも言えるが、2023年上半期はJ-REITの増資が急減した影響が大きいと考えられる。増資時の投資家の購入分は東証の買い越し額にカウントされないためだ。

銀行の買い越し基調継続がJ-REIT価格上昇には必要

2023年下半期以降の価格を左右する投資家として、金融機関のうち銀行が挙げられる。前述の通り金融機関は2023年上半期買い越しに転じているが、生損保は2022年下半期の112億円の買い越しから105億円の売り越しに転じた中で、銀行は逆に262億円の売り越しから246億円の買い越しとなった。

この背景には、米国10年債利回りの上昇に伴い米国地銀の米国債含み損が拡大し、破綻懸念が広がったことがあると考えられる。つまり日本の金融機関としても米国債投資を行なうリスクが高くなり、代替投資先としてJ-REIT投資を拡大した可能性がある。今後も同様の傾向が続くことが想定されるため、中間決算期となる9月は売り越しに転じる可能性もあるが、銀行は安定的な買い越し主体となりそうだ。

銀行が買い越しを続ける点がJ-REIT価格にとって重要となる理由として、外国人投資家の大幅な買い越しが戻るまでには時間がかかると考えられるためだ。外国人は2023年上半期最大の売り手となったが、1月と2月で合計634億円と大幅に売り越ししたことが影響している。つまり3月以降の売り越し額は大きくなっていないため、下半期は買い越しに転じる可能性もある。

しかし米国10年債利回りが高い状態で推移する中では、図表の通り2022年上半期のように大幅な買い越しは期待出来ない。従って2023年下半期のJ-REIT価格上昇には、投資信託に続く安定的な買い越し主体が必要であり、金融機関がその役割を果たすことが必要となりそうだ。