◆今日9月2日は「くじの日」。常々言っていることだが僕は「飲む・打つ・買う」の人生を送ってきた。だから博打は三度のメシより好きだが、宝くじだけは買わない。なぜなら当たらないからである。宝くじは、よく「買わなければ絶対に当たらない」と言われるが、買っても当たらないのが宝くじである。宝くじというのは、もっとも効率が悪い(つぎ込んだ掛け金が当たる率の悪い)ギャンブルだからである。

◆日本人で初めてポーカーの世界チャンピオンになった木原直哉さんはプロのポーカー師である。ポーカーで生計を立てているからプロと言えるわけだが、「よくギャンブルで食べていけますね」と半ば呆れたように訊かれることが多いという。木原さんの感覚ではポーカーは仕事だがギャンブルをしているとは思っていない。では木原さんのギャンブルの定義は何か?それは「期待値がマイナスなことにおカネを賭けること」だという。

◆期待値とは、ある事象が起きた時に発生するリターンと、その生起確率をかけて足し合わせたものである。例えば、コイン投げの賭け。100円を掛け金として表が出れば100円もらえる。裏がでれば何ももらえないで掛け金は没収される。リターンはマイナス100円である。この賭けの期待値は、100円×50% + マイナス100円×50% = 0円。こんな賭けはやらないほうがましである。事実、プロのギャンブラーなら、こういうオッズの賭けには絶対手を出さない。

◆ジャンボ宝くじの1等賞金4億円が当たる確率は1000万分の1だから期待値は40円。一番下の7等は10本に1本、300円が当たる。期待値は30円である。1等から7等まですべて期待値を合計すると150円。宝くじは150円の期待値のものを300円払って買う。1枚買うごとに150円損するのと同じことである。競馬でもJRA(中央競馬会)のピンはね率は25%で残りの75%を払い戻すのに対して、宝くじは「法律によって(!)」売り上げの半分以上を払い戻せない。すなわち、50%以上、胴元=地方自治体がピンはねするということである。宝くじがいかに効率の悪いギャンブルであるかご理解いただけたであろう。

◆さて秋の臨時国会ではカジノ法案が目玉になる。日本にもカジノができるとお喜びの諸兄へ。ゼロサムゲームで胴元がいては絶対に勝てない。胴元がいないゲームに参加しよう。手っ取り早いのは、さしずめ株式市場だ。証券会社的に、うまくまとめたオチで恐縮です。

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆