◆君らの熱闘の翌日から/甲子園の季節は秋になった
作詞家の阿久悠さんが、昭和54年、箕島vs星陵の球史に残る名試合に感動して詠んだ詩の書き出しである。台風で開幕が遅れた今年の全国高校野球選手権大会も昨日が決勝戦。大阪桐蔭高校が接戦を制して2年ぶり4度目の優勝を飾り、2週間にわたった熱戦の幕を閉じた。
◆阿久悠さんの詩をこう書きかえよう。甲子園の決勝の翌日から/日本の季節は秋になる。高校野球が終わると、とたんに秋の気配が立ち始める。日中はうだるような暑さが続くが、朝晩の風には涼が感じられるようになる。明らかに真夏とは空気が違ってくる。季節の移ろいのなかで、この「法則」だけは不変のもののように思う。
◆この夏はエルニーニョの発生により冷夏の予測が出されるなど、異常気象に対して警戒が高まっていたが、結局エルニーニョは発生せず、冷夏どころか猛暑になった。景気にとっては夏は夏らしく暑いに越したことはない。その一方、台風や豪雨などによって甚大な自然災害がもたらされた地域もある。4-6月のGDPが大幅に悪化し、7-9月の景気がどれだけ持ち直すことができるかが注目を集めているだけに、例年通りの暑さが景気にとってプラスに働いたのか、お盆休みの時期を直撃した自然の猛威が景気にも打撃を与えたか、非常に気になるところだ。
◆誰が予測出来るだろう/祈ることはあっても/願うことはあっても/予測出来るはずがない/ましてや確信など誰にあろうか
阿久悠さんの詩の後半部分である。箕島と星陵の、熾烈を極めた激闘の結果を誰も予測などできやしないと詠んだ。景気の予測も気象の予測も完璧などありはしない。詩はこう続く。
熱く長い夏の夜/人々の胸に不可能がないことを教え/君らは勝った
ひとつだけ確かなことは、人間に不可能はないということだ。今回の自然災害で被害を受けた地域も必ず復旧する。心からそう祈る。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆