つみたてNISAや確定拠出年金(企業型DC・iDeCo・)制度を活用する際に、選択肢の1つとして大きな存在感を示している投資信託。その投資信託を選ぶ際に知っておきたい指標がいくつかあります。今回はその中の1つ、シャープ・レシオをご紹介します。
シャープ・レシオとは
投資信託を選ぶ際の原則は、下記になります。
・同じリターンであればリスクの低いほうを選ぶ
・同じリスクであればリターンの高いほうを選ぶ
例えば、2つの投資信託があってリターンは同じ5%とします。リスクについては前者が8%、後者が15%であれば、前者を選ぶということになります。とはいえ、実際はこれほどわかりやすいというわけではありません。そこで、複数の投資信託を比較する際に使われるのが「シャープ・レシオ」という指標です。
シャープ・レシオというのは、「そのリターンを得るためにどれ位のリスクを取っているかを計測する指数」のことで、一般的に数値が大きい投資信託のほうが「運用効率が良い」とされています。つまり、リスクを抑えながらリターンを上げた投資信託ほど、シャープ・レシオは高い数値になります。
具体的には、リターンからリスクフリーレートを引いた数値をリスクで割って計算されます。リスクフリーレートというのはリスクのない(元本保証された)商品から得られる利回りのこと。これをリターンから差し引くのは、投資信託購入にリスクを伴う以上、リスクを取らずに実現できる収益以上のプラスαを上げよう、ということです。
例えば、投資信託の評価を行う格付投資情報センターは毎年「R&Iファンド大賞」(※)を公表していますが、この賞は原則として投資信託をシャープ・レシオで評価するというシンプルな選考方法を採っています。
下記の例で解説します。Aファンドのシャープ・レシオが0.8、Bファンドのシャープ・レシオが0.6なので、数値の大きいAファンドのほうが効率的に運用されているのがわかります。
【シャープ・レシオ=(リターン-リスクフリーレート)÷リスク】
(例1)
Aファンド:リターン8%、リスク10%
Bファンド:リターン6%、リスク10%
Aファンドのシャープ・レシオ=8÷10=0.8
Bファンドのシャープ・レシオ=6÷10=0.6
↓
数値の大きい「Aファンド」のほうが効率的に運用されています。
これが一般的な見方ですが、シャープ・レシオを見る上ではいくつかの注意点があります。
シャープ・レシオを有効に活用するための注意点
1.同じ分類、同じカテゴリーのファンドでないと比較できない
例えば、日本株投信と外債投信などを同列で比較してもあまり意味がありません。また、シャープ・レシオを投資信託選びの指標の1つとして利用するのは良いですが、純資産総額や信託期間といった項目も併せて確認する必要があるでしょう。いくら効率的に運用されていても、もうすぐ償還になる投資信託や、純資産総額がどんどん減っている投資信託を選ぶのは望ましくないためです。
2.リターンがマイナスの時には、リスクの大きいファンドのほうが運用効率の良いファンドになる
例えば、Cファンド、Dファンドのリターンがともに-(マイナス)10%で、リスクはCファンドが10%、Dファンドが20%という場合、Dファンドのほうがシャープ・レシオの数値は高くなります。しかし、Cファンドに比べ、Dファンドのほうがリスクは高いわけですから、Dファンドのほうが効率的に運用されているとみるのは現実と合致しません。
このように、リターンがマイナスの時には普段とは逆の現象が起こってしまうのです。そのため、シャープ・レシオだけでなく、リスクやリターンなども併せて確認することが大切です。
(例2)
Cファンド:リターン-10%、リスク10%
Dファンド:リターン-10%、リスク20%
↓
Cファンドのシャープ・レシオ=-10÷10=-1
Dファンドのシャープ・レシオ=-10÷20=-0.5
有効と言われる指標も万能ではありません。他の要素と組み合わせたり、他のデータを併せてチェックしたりすることで、賢く活用することが大切です。
※「投資信託部門」は過去3年間、10年間、20年間を選考期間とし、シャープ・レシオによるランキングに基づき、最大ドローダウンを加味した上で選考。残高がカテゴリー内で上位50%以上かつ30億円以上であることが条件。