急上昇してきた日経平均株価ですが、株式市場はここにきて調整色を増しています。急ピッチな上昇への警戒感に加え、7月末の日銀政策決定会合を控え、金利政策に何らかの変化が出るのでは、との観測台頭がその背景にあるのでしょう。

日銀動向に関しては前回のコラムでも波乱要因として挙げていましたが、予想よりも早い反応となった印象です。今後も引続き、金利動向に神経質な動きを予想しますが、政策決定会合後にはむしろ大きく動く可能性が高まってきているように感じています。

コロナ禍以降上昇基調が続く総合商社株、その背景にバフェット氏の影響

さて今回は「総合商社株」をテーマに採り上げてみましょう。総合商社株はコロナ禍発生後の株式市場において、上昇相場を牽引する代表的な業種となっています。現在においても上昇基調は続いており、注目されている方も少なくないのではないでしょうか。ここではそのような総合商社株について、上昇相場牽引の背景などをまとめてみたいと思います。

総合商社株が動意づいたのは2020年、ちょうどコロナ禍の最中でした。きっかけは世界的な投資家である米国のウォーレン・バフェット氏(の所有する投資会社)が突如として総合商社の大株主へと浮上したことでした。バフェット氏のお眼鏡に適ったということで総合商社株が改めて見直されることになったのです。

バフェット氏の名前が出る直前の株価と現在の株価を比較すると、5大商社の時価総額は約3年で実に2.6倍にも膨らんでいます。この間の日経平均株価の上昇が40%であることと比較すると、総合商社株の躍進が分かっていただけるでしょう。

ただ、株価上昇の要因を単にバフェット氏のお墨付きと簡単に結論づけてしまうのはいただけません。ここまで株価が上昇した背景には、それなりにきちんとしたファンダメンタルズで説明できる何かがあったということであり、その本質を理解・把握することで今後の総合商社株への投資方針に繋げたいところでしょう。

世界的な金融緩和やインフレリスクも追い風に

そもそも総合商社株は株式市場においては「不人気」業種として有名でした。取扱商品があまりに多岐に渡っている為に、いわゆる「コングロマリットディスカウント」が働いていた上、景気連動、特に市況製品の取扱が多いことから業績の安定性・再現性に疑問が持たれていました。

商社というビジネスモデルが日本独自のものであるために、海外投資家からは「付加価値がよくわからないビジネス」と認識されていたという背景もあります。急騰する前の総合商社株は万年割安株という評価が定着していたのです。

しかし、コロナ禍によって世界規模で劇的な金融緩和が実施され、数十年ぶりにインフレリスクが台頭することになりました。ファンダメンタルズ的には、これらが総合商社株に業績面での強烈な追い風となったのです。

バフェット氏が総合商社株に着目した理由は定かではありませんが、「ディープバリュー」(徹底した割安株投資)で知られる氏の投資方針から想像すれば、割安株として既に認識していたところにインフレの兆しを敏感に察知したのではないかと想像します。

また、東証のPBR1倍割れ是正要請もあり、各社の配当水準引上げなどのROE改善策が株価水準をさらに引き上げる結果となりました。バフェット氏のアクションは強烈なきっかけとなりましたが、一連の株価上昇にはそれなりの「上昇する理由」もまたあったのです。

日本の5大総合商社、投資の参考にしたい各々の特徴とは

当然、今後の総合商社株の行方に関しても、そのようなファンダメンタルズに関して相応の注意を払っていく必要があります。バフェット氏は長期投資家として知られていますが、割安局面で投資しているからこそ、それが可能であることを忘れてはいけません。

現在、既に株価の上昇から総合商社株の「割安さ」はかつてほどではなくなってきています。これからエントリーしようという投資家には、ファンダメンタルズでは世界的なインフレ状況や金利動向がカギになる一方、総合商社の選別もまたより重要になってくると思います。

なお、総合商社として広く認識されている企業は7社しかありません(その他多くは「専門商社」)。このうち、三菱商事(8058)、三井物産(8031)、伊藤忠商事(8001)、住友商事(8053)、丸紅(8002)の5社を5大商社として括って考えるのが一般的です。「総合」である以上、5社の事業内容はかなり似通っているのですが、敢えてその中で各社別の個性に注目すると以下の通りとなります。

三菱商事はまさに「総合」の代表例という印象です。重厚長大産業に存在感を有する三菱グループ力に加え、コンビニエンスストア「ローソン」などを通じて消費者向けビジネスも展開しています。

三井物産は、その三菱商事と双璧を成す位置付けです。やはり「総合」力に秀でている印象ですが、比較的資源関連ビジネスへの傾斜が強いと言えるでしょう。伊藤忠商事は非財閥系ながら、三菱・三井と伍すポジションにある総合商社の雄です。両社とは異なり、資源関連ビジネスのウエイトは比較的低く、その代わりに「ファミリーマート」を擁するなど生活消費関連の比重が高いのが特徴です。中国関連のパイプの強さも特徴的と言えるでしょう。

住友商事は非鉄資源にも実績を有する一方、メディア系ビジネスへの傾斜が印象的です。丸紅は穀物など農業関連と電力事業がその目玉と言えるでしょう。今後の総合商社株投資の参考としていただければ幸いです。