モトリーフール米国本社、2023年6月27日 投稿記事より

主なポイント

・株式市場が乱高下する中、投資家は株式分割を実施する企業に殺到
・アルファベット、アマゾン・ドットコム、テスラ、エヌビディアは飛ぶ鳥を落とす勢いのグロース株であり、いずれも過去2年間に株式分割を実施している
・次の株式分割の有力候補は、持続的な競争優位性を持つ業界トップ企業4社


知名度が高く、長期にわたるアウトパフォーマーで、株式分割の機が熟していると思われる4銘柄

ウォール街は予測のつかないことであふれていますが、1つ確実なのは、投資家は、ほぼいかなる状況下でも好材料を見出すということです。

ダウ工業株30種平均、S&P500指数、ナスダック総合指数が2022年に弱気相場入りして以降、投資家はどうにかしてトンネルの先に光を見出そうとしています。多くの投資家にとって、株式分割を実施した企業はそうした一条の光となっています。

株式分割によって、上場企業は時価総額や事業運営に影響を与えることなく、株価や発行済み株式数を変えることができます。これは、名目上の株価を手頃な価格にすることで、端株を購入できない投資家でも取引できるようにしたり(通常の株式分割)、あるいは主要取引所への上場を維持するために株価を引き上げたり(株式併合)するための、見た目上の変更にすぎません。

大半の投資家は、株式分割を実施する企業に群がります。なぜなら、株式分割を実施する企業は通常、競合他社を凌ぐ力があるからです。だからこそ、株価もアウトパフォームしているのです。過去2年間に、飛ぶ鳥を落とす勢いのグロース株4銘柄が株式分割を実施しています。

アルファベット[GOOGL]
世界で最も有力な検索エンジンであるグーグル(世界検索シェア93%)やストリーミングプラットフォームのYouTubeの親会社。2022年7月に1対20の株式分割を実施。

アマゾン・ドットコム[AMZN]
米国のオンライン小売売上高の約40%を占めるeコマースプラットフォーム。2022年6月上旬に1対20の株式分割を実施。

テスラ[TSLA]
ゼロから築き上げ、自動車メーカーとして初めて電気自動車(EV)の大量生産を実現し、歴史を変えたEVメーカー。2022年8月下旬に1対3の株式分割を実施。

エヌビディア[NVDA]
人工知能(AI)を動かす画像処理装置(GPU)により、AIに特化したデータセンター市場で圧倒的なシェアを持つ。2021年7月に1対4の株式分割を実施。

株式分割を実施する企業は、少なくとも最近は、市場をアウトパフォームしています。問題は、次にどの企業が株式分割を実施するかです。以下に紹介する4銘柄は、その有力候補かもしれません。

ブロードコム[AVGO]

ブロードコムは半導体ソリューションのスペシャリストであり、株式分割を行う可能性は十分にあります。ブロードコムは株式分割を実施したことがありますが、2016年2月に同社を買収したアバゴ・テクノロジー(社名はブロードコムが存続)は株式分割を行った実績がありません。過去10年間で株価は2,100%近く上昇し、現在の株価は822ドルに達しています。

ブロードコムでおそらく最も有名なのは、次世代スマートフォンで使用されるワイヤレスチップやアクセサリーでしょう。5Gインフラが着実に拡大し、ダウンロードのスピードが速くなれば、企業や消費者はワイヤレス機器をアップグレードしたくなるものです。こうした安定した買い替えサイクルにより、ブロードコムの売上高は今後も成長し続け、受注残も安定的に推移するとみられます。

しかし、2023年にウォール街の注目を集めているのは、ブロードコムがデータセンターや自動車で果たす役割です。データセンター向けの接続チップやアクセスチップが安定的に伸びているのに加え、ホック・タンCEOが、AI関連チップの四半期売上高が倍増して約10億ドルになるとの見通しを示したこともあり、株価は2023年に入って急騰しています。

チポトレ・メキシカン・グリル[CMG]

ファストカジュアルレストランをチェーン展開するチポトレ・メキシカン・グリル(以下、チポトレ)も、株式分割が十分に予想されます。2006年に22ドルで新規株式公開(IPO)して以降、株価は9,189%上昇していますが、同社はこれまで一度も株式分割を実施したことがなく、株価は既に2,000ドルを超えています。

時に、それほど深く調べなくても、企業の好業績の理由がすぐに分かることがありますが、チポトレはそれに当てはまります。チポトレが競合他社に勝る業績を上げている理由の1つは、料理です。同社は、新鮮な食材を使って毎日調理された料理を出し、地元産の野菜や責任をもって飼育された肉を使うことに徹底的にこだわっています。ここ20年の間に、消費者は健康的でオーガニックな食品を求める傾向が強まっており、チポトレの成功はこのトレンドの力を裏付けています。

さらに、チポトレはイノベーションの力でも他社に勝っています。同社は2018年に、顧客がオンラインで注文し、ドライブスルーで商品を受け取る「チポトレーン」を導入しました。その3年後には、オンライン注文のみに対応する初のチポトレーン・デジタルキッチンをオープンさせました。

売上高は2桁の成長を維持しており、チポトレが正しいことをしているのは明らかです。

オートゾーン[AZO]

株式分割が見込まれる3番目の企業は、自動車部品チェーンのオートゾーンです。前回の株式分割は1994年4月で、それ以降株価は9,133%上昇し、今では2,400ドルを超えています。

オートゾーンがこれほど長期にわたって、高いパフォーマンスを維持し続けている重要な理由の1つは、同社の資本還元プログラムにあります。同社は無配当ですが、取締役会は積極的な自社株買いを承認しています。自社株買いを初めて行った1998年度以降、同社は合計1億5,360万株、328億ドル相当の普通株を買い戻しています。現在の発行済み株式は1,823万株しか残っておらず、自社株買いを継続するという理由のために株式分割を行う可能性があります。

オートゾーン株にとってもう1つのカタリストは、米国内の道路を走る自動車の老朽化にあります。S&Pグローバルの一部門であるS&Pグローバル・モビリティの最新データによれば、米国で登録されている自動車2億8,400万台の平均年数は12.5年です。これは過去最高であり、古い車を走らせ続けるための自動車部品やアクセサリーを販売する企業にとっては朗報です。

コストコ・ホールセール[COST]

最後に紹介するのは、会員制倉庫型スーパーのコストコ・ホールセール(以下、コストコ)です。コストコが最後に株式分割を実施したのは2000年1月で、それ以来ほぼ1,000%のリターンを実現しています(配当は除く)。6月23日時点の株価は、525ドル近くになっていました。

コストコが長期にわたって高いパフォーマンスを上げている秘訣は、同社の購買力と、会員制によるビジネスモデルにあります。前者については、コストコは規模と資金力を活かして、店頭に並ぶ商品のほとんどを大量に仕入れています。大量に仕入れることで単位コストが下がり、低価格という形で顧客に還元でき、新たな会員を呼び込むための宣伝材料としているのです。

会員制というモデルも、コストコの成功に大きく寄与しています。コストコは、食料品を極めて薄利で販売していますが、個人や企業が支払う年会費が利益に大きく貢献しています。こうした年会費のおかげで、コストコは他の小売企業を下回る価格を実現できるのです。

株式分割を実施すれば、この確実な勝ち組企業が一般投資家の目に留まるかもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットの元CEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。アルファベットの幹部であるSuzanne Freyは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Sean Williamsは、アルファベット、アマゾン・ドットコムの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアルファベット、アマゾン・ドットコム、チポトレ・メキシカン・グリル、コストコ・ホールセール、エヌビディア、S&Pグローバル、テスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフール米国本社は、ブロードコムの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。