利上げ再開でリラは反発するか?

5月に行われた大統領選挙後、最初のトルコ中央銀行による金融政策決定会合が6月22日に行われる。記録的なインフレが続くトルコだが、「インフレには利下げが有効」といったエルドアン大統領の独自の理論でこれまでは利下げを行ってきた。しかし、今回の大統領選挙での苦戦を受け、エルドアン大統領もインフレ対策について中央銀行の判断を尊重するとしていることから、今回は利上げが行われるようだ。

現在のトルコの政策金利は8.5%だが、それを一気に15~20%まで引き上げると予想されている。では、予想通りにインフレ対策の利上げが行われた場合、長期下落相場が続いてきたトルコリラの反応はどうなるだろうか。

トルコリラ/円は、5月末に行われた大統領選挙の決選投票で現職のエルドアン大統領の再選が決定すると下落が再燃し、この間の安値を更新。一時は6円を大きく割り込むところとなった(図表1参照)。

【図表1】トルコリラ/円の推移(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

こうした中で、トルコリラ/円の90日MA(移動平均線)かい離率は一時マイナス15%程度まで拡大した(図表2参照)。経験的には、これはトルコリラ/円の短期的な「下がり過ぎ」懸念が強くなってきた可能性を示すもの。その意味では、上述のように、インフレ対策でトルコ中銀が大幅利上げに踏み切った場合、短期的な「下がり過ぎ」の修正でトルコリラ/円は反発に向かう可能性があるだろう。

【図表2】トルコリラ/円の90日MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ただし、要注意なのは利上げの決定でも、「利上げ幅が不十分」などとしてトルコリラの反発が限られた場合だ。トルコリラ/円の90日MAかい離率を見ると、マイナス10%台で短期的な「下がり過ぎ」が一巡しなかった場合は、同かい離率が一気にマイナス30%以上へ拡大する「大暴落コース」に向かった。以上のことから、22日のトルコ中銀の会合で利上げが決定しても、それが素直にトルコリラの急反発をもたらすかについては慎重な見極めが必要かもしれない。

トルコでも、2020年から2021年にかけてインフレ対策の常識である利上げを行ったが、当時はトルコリラ/円もそれに素直に反応し、2014年から続く長期下落トレンドで基本的に超えられなかった52週MAをトライする動きとなった(図表3参照)。そんなトルコリラ/円の52週MAは足元で7.3円程度なので、利上げを受けて、トルコリラが反発に向かうなら、7円台の回復を目指す見通しになりそうだ。

【図表3】トルコリラ/円と52週MA(2014年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成