先週は債務上限問題に一喜一憂する展開

先週、 S&P500 S&P500S&P500とは、アメリカ合衆国の株式市場に上場している大手企業500社を選出して構成される株価指数です。この指数は、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が選定し、経済の状況や市場の動向を反映するた... は1.65%上昇、19日(金)の ザラ場 ザラ場ザラ場とは、株式市場における通常の取引時間中のことを指します。具体的には、証券取引所が開いている時間帯で、投資家が実際に株式などの売買を行うことができる期間を意味します。 たとえば、東京証券取引所の... 中に4,212.9と2023年の 高値 高値高値とは、株式や商品などの金融資産が取引される市場において、特定の期間内で記録された最も高い価格のことを指します。 たとえば、株式市場においては、1日の取引時間中に記録された最高の株価をその日の高値... をつけました。ナスダック100も、先週は3.47%上昇し、同じく19日(金)に2023年の高値である13,874.4をつけています。

上昇の背景として、債務上限問題が期限までに解決されるという見方が支配的になったことと、先週の小売の決算発表はまちまちだったものの、AI関連銘柄を 物色 物色物色とは、投資家が投資対象となる株式やその他の金融商品を探し求める行為を指します。市場において、投資家は様々な情報を基に、将来価値が上がると予想される銘柄や資産を見つけ出そうとします。 この過程では... する動きが活発であったことが挙げられます。アドバンスト・マイクロ・デバイシズ(AMD)やエヌビディア(NVDA)など半導体関連銘柄が上昇、アルファベット(GOOGL)やアマゾン(AMZN)も好調でした。

また、2023年第1四半期に発表された13Fのファイリングによると、大手 ファンド ファンドファンドとは、複数の投資家から資金を集め、その資金を株式、債券、不動産など様々な資産に投資して運用する仕組みのことです。ファンドはプロの運用管理者によって管理され、投資家はファンドに出資することで、個... などが大型IT銘柄の保有を増やしていることも市場全体の上昇につながりました。

今後S&P500が、これまでのトレーディングレンジの上限である4,200のレベルを超えて上昇を継続できるかは、米国株式市場にとって目先の懸念材料である債務上限引き上げ問題の解決にかかっています。

先週前半は債務上限引き上げを巡る不透明感が強まっていました。しかし、17日(水)になると民主党と共和党の交渉で、マッカーシー下院議長(共和党)が、週末までの交渉成立に前向きな姿勢を示したことから、協議の進展への期待が高まり、株式市場は買われる展開となりました。

その後、19日(金)に債務上限引き上げを巡る与野党協議が一時停止となったことが伝わると株式市場は反落しました。 引け 引け引けとは、株式市場において、取引が終了する時刻のことを指します。また、その時刻に記録される株価を指す場合もあります。 株式市場には、一定の取引時間が設けられており、その終了時刻が引けです。たとえば、... 後に両者の会話は継続されると発表され、今週22日(月)にバイデン大統領は広島のG7サミットから帰国後、マッカーシー下院議長と協議を行うとしています。

加えて、先週は米地銀の経営不安が後退したことも投資家心理の改善につながりました。

今週の焦点は、引き続き債務上限問題の行方です。米国財務省によると、上限の締め切りは6月1日とのことです。最終的には合意に達すると思われるものの、今後10日間で合意に至るまで、メディアから報道される交渉の進捗具合はヘッドラインリスクであり、株式市場を乱高下させる可能性は否定できません。

今週、米国時間24日(水)には、AI銘柄として注目されているエヌビディア(NVDA)の決算発表が予定されています。同社の株価は2023年に入ってから既に2倍になっており、S&P500やナスダック100の上昇に貢献してきました。

果たして今後メガキャップ銘柄のラリーが継続し、米国株式市場全体がサマーラリーを迎えられるのでしょうか。それは、債務上限合意や、エヌビディアの決算発表後のマネジメントによる今後の見通しの発表にかかっていると言えるでしょう。

企業の経営陣は市場ほど経済の行方に心配せず

株式市場では、投資家が経済の減速や景気後退を心配すると株価が動きます。ただ、米国の企業の経営陣は景気の見通しについて必ずしも投資家と同じようには心配していないようです。

金融情報会社のファクトセットによると、S&P500企業のうち今回の決算発表の際の決算コールで、107社が「リセッション」を引用しています。これは過去5年平均の77社、10年平均の59社を大幅に上回っています。ただ、直近のピークである2022年第2四半期の238社と比較すると55%下回っています。なお、2022年第3四半期は184社(今期+42%)、2022年第4四半期は147社(+27%)と着実に減少傾向にあります。

そうは言っても、まだS&P500採用企業のうち約25社が第1四半期の決算発表を行なっていません。したがって、最終的な数値は107社より多くなる可能性がありますが、これまでの3四半期の数値を下回るのではないかと思います。つまり、株式市場で投資家は、景気後退を引き続き「懸念」している一方、企業の経営陣は景気後退をそれほど気にしなくなっているようです。

また、興味深いのは、市場の懸念とは裏腹に、少数のS&P500採用企業だけが「債務上限」について議論していることです。3月15日から5月18日までの間に、「債務上限」という用語が使われているのは、今回のS&P500採用企業の決算コールの中でわずか13社となっています。これは、企業の経営陣は最終的には債務上限問題は合意に達すると考えられているためだと思います。

今週注目の米国企業の決算発表

今週、注目の決算発表は以下の通りです。

5月22日(月):ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)

5月23日(火):BJsホールセール・クラブ・ホールディングス(BJ)、ロウズ・カンパニーズ(LOW)、パロアルト・ネットワークス(PANW)、アーバン・アウトフィッターズ(URBN)、ブイエフ(VFC)

5月24日(水):アバクロンビーアンドフィッチ クラスA(ANF)、アナログ・デバイシズ(ADI)、コールズ(KSS)、アメリカン・イーグル・アウトフィッターズ(AEO)、エヌビディア(NVDA)、スプランク(SPLK)

5月25日(木):ベスト・バイ(BBY)、ダラー・ツリー(DLTR)、ラルフローレン(RL)、コストコ・ホールセール (COST)、ギャップ (GPS)、マーベル・テクノロジー・グループ (MRVL)、アルタ(ULTA) 、ブイエム・ウエア クラスA (VMW)