FRBは0.25%の利上げを決定

5月第1週目の米国株式市場では、S&P500は0.8%の下げ、ナスダック100は0.1%の小幅上昇となりました。

第1四半期の決算発表の真っ只中、5月2-3日には世界の金融市場が注目するFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、市場の予想通り25 bp(ベーシスポイント)の利上げが決定されました。これで2022年の春から10回目の利上げとなります。利上げ発表後の記者会見でパウエルFRB議長は2023年後半に利下げが行われる可能性は低いと述べました。

しかし「CME Fedウォッチ」の最新情報を見ると、市場は2023年中にフェデラル・ファンド金利が現在の5%~5.25%の水準から4.25%~5%の間へ下がると予想しており、債券市場はパウエルFRB議長の言葉を聞き入れていない格好です。債券市場では金利が下落するものの、更なる地銀の破綻の懸念もあり、株式市場は売られる展開となりました。

アップルの決算は市場予想を上回り、株価上昇

そのようなマーケットの更なる下落を救ったのは、4日(木)の引け後に発表されたアップル(AAPL)の決算でした。同社の決算は、中国経済の再開の恩恵を需要・生産の両面から享受した内容で、売上全体、EPS、粗利益いずれも市場予想を上回りました。

市場の懸念はあくまでも懸念であったという結果となっています。3月期のサービス事業部門の売上は209億米ドルで、ウォール街の予想をやや下回る結果となったものの、過去最高を記録しました。製品事業より利益率が高いサービス事業は、同社のハードウェア製品のインストールベースの継続的な成長を受け、今後も更なる成長が期待されます。

また、アップルは最大900億ドル(発行済み株式の3.3%に相当)の自社株買いを承認し、四半期の配当金を1株当たり0.23ドルから0.24ドルへと4%の増配を発表しました。市場はこれを歓迎し、同社の株価は1日で4.7%上昇、この日の市場全体の上げに貢献しました。今回の決算発表を受け、少なくとも4人のアナリストがアップルの目標株価の上方修正を行なっています。

また翌5日(金)に発表された4月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比25万3,000人増と市場予想(18万人)を上回り、景気が悪化するのではないかという懸念を払拭しました。

下落が止まらない地銀株、ファンダメンタルズ改善の兆し

先週前半、米国株式市場全体のセンチメントを悪化させていたのは地銀の下落でした。3月のシリコンバレー銀行に続き、5月に入ってファースト・リパブリック・バンクが破綻し、次はどの地銀が破綻するかとの懸念がある中、地銀株の空売りを仕掛けるファンドもあり、市場を下げる要因の1つになりました。しかし5日に発表された予想を上回る雇用データは、地方銀行の健全性に対する懸念を和らげ、先週下げていた銀行株指数はこの日、急上昇したのです。

実際、米国地銀の健全性については、ファンダメンタルズの改善を見ることができます。図表1は米国の銀行の預金額の推移です。これを見ると、3月15日には大手銀行25行から前週比で預金の流出が顕著でしたが、資金流出が一服した後、トレンドは改善基調にあり、直近4月26日までのデータでは前週比210億ドルの預金が流入しています。

【図表1】米国銀行の預金額フローの推移(前週比)
出所:ビスポーク

一方、融資額フローの推移を見ても同様のトレンドが見られます。個人、商業、工業、不動産用の融資額を見ると、3月22日に激減したものの、その後回復基調にあり、4月26日時点では前週比で294億ドルほど増加しています。

【図表2】米国銀行の融資額フローの推移(前週比)
出所:ビスポーク

現在のS&P500のバリュエーションは過去5年を下回る

S&P500採用企業のうち425社が決算発表を終えています。データ会社のファクトセットによると、今回の決算発表は2021年第4四半期来の事前予想を上回る内容とのことです。前期に続き今期も前年同期比で減益ではあるものの、事前予想を上回った企業数、サプライズの度合い、ともに過去10年間の平均を上回っているということです。

今後の見通しについて、第2四半期のコンセンサスは5.7%の減益、第3四半期、第4四半期についてはそれぞれ1.2%、8.5%の増益予想となっており、2023年通年では1.2%の増益の見込みとなっています。現在のS&P500の今後12ヶ月のEPSを使った予想PEレシオは17.7倍となっており、過去5年の平均18.6倍を下回るレベルとなっています。

今週注目の米国企業の決算発表

今週、注目の決算発表は以下の通りです。気になるのは、8日(月)のペイパル(PYPL)、10日(水)のウォルト・ディズニー(DIS)といったところでしょうか。

5月8日(月):タイソン・フーズ(TSN)、ハーモニック(HLIT)、ペイパル・ホールディングス(PYPL)

5月9日(火):アファーム ホールディングス(AFRM)、エアビーアンドビー(ABNB)、アカマイ・テクノロジーズ(AKAM)、エレクトロニック・アーツ(EA)

5月10日(水):ロブロックス (RBLX)、ウェンディーズ (WEN)、ロビンフッド・マーケッツ(HOOD)、ウォルト・ディズニー(DIS)