「一時的下落」と「上昇トレンド終了」の判別法

この数ヶ月におけるメキシコペソ/円のピークは、2022年11月3日と2023年3月8日だった(図表1参照)。これは、前者は米CPI(消費者物価指数)発表をきっかけに「米金利急低下=米ドル急落」へ転換した局面。そして、後者は「SVB(シリコンバレー銀行)ショック」を受けて、やはり金融システム不安の浮上に伴う「米金利低下=米ドル安」が起こったケースだった。

【図表1】メキシコペソ/円の推移(2020年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上に加えて、上述の2つのケースに共通したのはメキシコペソが短期的に「上がり過ぎ」懸念が強くなっていたということ。上述の2つのケースにおけるメキシコペソ/円の90日MA(移動平均線)かい離率はプラス7%以上に拡大し、短期的なメキシコペソ/円の「上がり過ぎ」懸念の拡大を示すところとなっていた(図表2参照)。一方、足元のメキシコペソ/円の90日MAかい離率は5%程度にとどまっている。

【図表2】メキシコペソ/円の90日MAかい離率(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上を踏まえると、メキシコペソの下落リスクに注意が必要になるのは、米ドル/円が急落に転じ、それに巻き込まれる場合だろう。その上で、メキシコペソ/円の90日MAかい離率が10%近くに拡大し、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていた場合は、その反動がメキシコペソ下落を加速させるリスクにも注意が必要だと思われる。

メキシコペソ/円は、2020年3月から上昇トレンドが続いてきたが、その中ではごく短期間を除くと52週MAを上回って推移してきた(図表3参照)。その意味では、上昇トレンドが続く中での一時的なメキシコペソ下落は52週MAを大きく長く割れない程度にとどまる可能性が高いだろう。

【図表3】メキシコペソ/円と52週MA(2010年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

逆に言えば、52週MAを大きく長く割れるようなら、2020年3月以降、対円で最大8割もの大幅高を演じている「最強通貨」メキシコペソも、ついに上昇トレンドが終わり、下落トレンドへ転換した可能性が出てくるだろう。そんなメキシコペソ/円の52週MAは足元で6.9円程度だ。