「世界経済は過去最低の水準」、日本も下方修正に

国際通貨基金(IMF)は四半期ごとに世界経済見通しを公表しており、現地時間4月11日に最新の見通しが示されました。「インフレは緩やかに低下するものの経済成長は過去最低の水準にあり、金融リスクが増している」とまとめられました。

成長見通しは前回1月時点からは2023年、2024年共に世界全体で0.1%の下方修正にとどまっています(図表参照)。ただし、基本シナリオに含まない下振れリスクが強調されるなど見通しは慎重なトーンです。

【図表】
出所:IMF世界経済見通しより筆者作成

なお、国別にも日本やインドで下方修正が見られています。修正の詳細は示されていませんが、両国の直近GDPの下振れや後述の経済分断リスクが影響しているかもしれません。

世界全体の物価見通しは上方修正、金融引き締めの影響にも言及

世界全体の物価の見通しは2023年7.0%、2024年4.9%と前回からそれぞれ0.4%、0.6%上方修正されました。エネルギーや食料品の下落が見られる一方、多くの労働者がパンデミック収束後も復帰していないことから労働市場の力強さが続いています。通常、金融引き締めサイクルが今のように進捗していると生産や雇用が鈍化する兆候が見られるものですが、総需要が予想以上に強いため、金融政策の引き締め・長期化が必要と見られます。

また新たな懸念事項としては、金融機関の破綻が見られるなど、金融引き締めの影響が金融部門に現れ始めたことです。当局の迅速な対応により金融システムの不安定性が深刻化はしていませんが、規制強化や融資引締めが進めば今後の下方修正につながるリスクが指摘されています。

欧州での戦争など地政学的緊張による経済分断リスクも指摘

投資家によって次に表面化しそうな脆弱性を探す可能性も注意されます。過度にリスクを取っている金融関連やファンダメンタルズの弱い地域がターゲットとなる可能性が指摘されています。深刻な下振れシナリオでは2023年の世界経済成長率は1%に減速するとみており、その可能性は15%と試算されています。

先だって示されていた中長期成長見通しでは5年先の世界経済の成長予測は3%と、1990年以降の中期予測としては最低値です。欧州での戦争や米中対立など地政学的緊張による経済の分断リスクが指摘されています。

短期的にも過去と比較して低水準の成長が予想されている中で金融リスクが高まっており、その中でインフレの低下が遅いという厄介な時期を乗り越えていく必要があります。