先週、債券市場で金利が乱高下
シリコンバレー銀行破綻の余波を受け、米国の債券市場では金利の乱高下が起き、大変な事態となっています。
今回の一連の流れは、3月7日にパウエルFRB議長がインフレを抑制するために政策の引き締めを強化するという固い決意を議会で示したところから始まっています。パウエルFRB議長のタカ派的な発言を受け、市場は次回の利上げ幅は50bp(ベーシスポイント)であることは間違いないだろうと判断しました。これにより2年債利回りはついに2007年ぶりに5%を超えてしまったのです。
このように金融市場で金利の急上昇というストレスが存在する中、今回のシリコンバレー銀行の破綻が起きました。破綻が起きると金融システムの崩壊につながるのではないかという見方も浮上し、不確実性が高まる中、債券市場では先週金利が乱高下しました。
米国2年債の利回りは、3月13日(月)には前金曜日比で0.6パーセンテージ•ポイント(以下PP)下落、翌14日(火)には0.27PP上昇、その翌日15日(水)は0.36PP下落、16日(木)には0.27PP上昇、17日(金)には0.32PP下落したのです。17日は最終的に3.84%で終わり、1週間で見ると2年債利回りは0.749PP下落しました。
ただ、そこにたどり着くまでの2年債利回りのボラティリティ(資産価格の変動の激しさを表すパラメーター)は歴史的な高まりを見せたのです。ICE BofA MOVE指標(債券版恐怖指数)を見ると、2023年の2月には100を切っていたのが先週には180を超えてしまい、2008年来のレベルまで暴騰しています。
今回の金利の乱高下で大きな収益を得たファンドもある一方、莫大な損失を出してしまったマクロヘッジも出ており、一部リスク制限に達してしまったファンドでは運用を止めざるを得なかったようです。
そんな中、株式市場で次のシリコンバレー銀行になるのではとの懸念を持たれたのがファースト・リパブリック・バンク(以下FRC)です。サンフランシスコに本社を置く資産規模全米14位地銀である同銀行は空売りヘッジファンドのターゲットになり、株価の下落が止まらなくなりました。FRCは、3月12日にJPモルガン銀行を通じて追加融資を受け、総額700億ドル(約9兆円)の資金を利用できるようになったと発表しています。
加えて、3月16日(木)には 11の米国大手銀行が共同でFRCを救済すべく総額300億ドル(約4兆円)を預け入れたものの、マーケットの不安を払拭することはできず株価の下落は続きました。
時を同じくして海の向こうの欧州でクレディ・スイス銀行の経営不安が浮上したことも 加わり、銀行株へ売りの拍車をかけることになります。金利や銀行株が不穏な動きをする一方、株式市場全体は先週上昇しました。
金利が下がる中、GAFAM銘柄は買われる展開
今回の問題でリスク資産となってしまった銀行株が売られる一方、GAFAMのような時価総額が大きく、潤沢なキャッシュフローを生み出している世界的な大企業の株が買われるという「質への逃亡」が起きています。2022年金利が上昇する過程で売られたGAFAMですが、今回金利が下がる中、買われる展開になりました。
それに伴い、銀行株が採用されていないナスダック100は5.83%の上げとなりました。先週、特にナスダック指数が上昇したのはこのような理由です。一方で先週、銀行セクターの比重が3.2%(金融全体では10.3%)であるS&P500は、1.54%上昇して終えています。
今週のFOMCが今後のマーケットの方向性を決める
今後のマーケットの方向性を決めるのは今週のFOMC(米連邦公開市場委員会)です。果たしてパウエル議長は今週水曜日(3月22日)に利上げを行うのか、それとも利上げを停止するのか、今後の方向性について踏み込んだ見解を発表するのか。「CME Fedウオッチ」によると、今回のFOMCについては69%の確率で25bp の利上げを行うと分析しています。コンセンサスでは、5月の利上げは停止、その後6月、7月のFOMCでは利下げが行われるという見通しとなっています。
今週のFOMCで今後の金利低下の可能性を示唆する声明が出るようであれば、このところのGAFAM銘柄を中心とするテクノロジーセクターのラリーは続き、ナスダックも続伸となるのではないかと思います。一方、もしも、パウエルFRB議長が利上げの継続の必要性を説くとならば、すでに最悪となっている金融資産の下げは、フリーフォールとなり、米国経済に悪影響を与える展開となる可能性が高まるでしょう。そう考えると、どうしてもパウエルFRB議長の声明のトーンはハト派的なものにならざるを得ないと思います。