ここのところ続けて遺伝や脳科学に関する本を読みました。
その中で経済格差につながる部分は、このコラムとも関わるため特に気になりました。以前「貧困スパイラル」について書いたことがあります。

第459回貧困スパイラル

高学歴=幸福ではないものの、平均的な収入は学歴に依存する傾向があるのが現実で、教育を受けられる環境にすることが、まずは貧困に陥らないための一つのアプローチです。環境を整えることで、貧困層を脱出させる手立てにはなるのでしょうが、環境が整えば誰でも有名大学に入れるのかと言えば、もちろんそうではありません。今回読んだ本によれば、IQの高さ(知能)や犯罪について、環境以上に遺伝の占める割合が多いというデータがあるとのこと。つまり以下の因果関係が言えるそうです。
「知能が高く、社会的に成功した親からは知能の高い子どもが生まれ、かつ経済的に豊かであるがために子どもは高学歴になる」
知能が低い親から生まれた子どもに環境を整えたところで、高い知能になるとは限らないということになります。日本人は「根性」とか「努力」という言葉が好きですが、その努力が役に立たないかもしれない、というのは厳しいですね。貧困スパイラルと同様に成功スパイラルもあり、経済格差が広がっていく大きな要因となるわけです。

ただ前述の通り、高学歴であれば必ず幸福になるのでも、お金があればあるほど幸せなわけではないのも、また、お金持ちの子が必ずお金持ちになるわけではないのも事実。そして経済格差の下でも、政治家以外はそれを正すことを目指すのではなく、一人ひとりの満足する生活を送れることを目指します。「満足する生活」は人によって異なり、誰かと比べるものでもなく、自身の周囲の環境からかけ離れていない限りは、必要以上な努力や根性がなくとも、実現は可能なはずです。気をつけるべきこととして、これまでも以下を挙げてきました。

・計画性をもつ

・リスクを取り過ぎない(偏らせない)

・無理をしない

遺伝が環境以上の影響を与えるという話を鑑みて、ライフプランには異色ですが、もう一つ加えてみます。

・親の成功・失敗の要因等を認識する

極端な例ですが、親がギャンブル依存症、アルコールなどの中毒症状のために経済的に苦労したような場合は、自身からギャンブル、アルコールなどを遠ざければよいのです。リスクを認識、回避することで、親とは別の道、自身の「満足する生活」に近づけることでしょう。

誰かが変えてくれることを待っていても、文句を言い続けていても残念ながら簡単には世の中は変わらないもの。自分自身でできる範囲で自分の「満足する生活」を目指していきましょう。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員