前回、この連載もめでたく500回目を迎えました。なかなか感慨深いものがあります。連載当初からすると、世の中の景気状況は大きく変化してきました。内外金利差が大きく、円安進行時は、FX投資でただ米ドルやユーロをロングにし続けるだけで金利差と為替差益を容易に稼げました。その後もオルタナティブ投資等の人気が出たり、新興国投資が活況したり、例え世界同時株安があっても投資の世界は何かしらの活路を見出すことができてきました。分散投資が有効であるということが示されてきたと言えます。

これまでの当コラムを読み返してみて、興味深いものがありました。

第36回10年後の日本は・・・?

2007年2月のコラムで、10年4か月前のものです。まさに現在が「10年後の日本」です。コラム内で紹介した書籍は「ハイパーインフレ」、「超管理社会」、「BRICs到来」、「強い日本の復活」という4つのシナリオをシミュレーションした近未来小説です。10年という月日はいろいろなことが起こるもので、中国のGDPが日本を抜き、世界第2位になっていることなど部分的には当たっていますが、当時想像しえない世界になってきてもいます。2007年までダウ平均株価が当時の最高値を更新したものの、翌2008年にはリーマンショックによる世界同時大暴落。日本経済は、その時よりは「復活」していますが、世界を引っ張る強さというわけではありません。

かつて、投資の世界で言われてきた常識は「世界はボーダーレス」、マネーは瞬時に世界を駆け巡り、世界中でそれに合わせ規制の撤廃や、自由競争がまい進するというものでした。まさかそれを牽引してきた米国自身が保護主義色をまとい、他国を排他する傾向を強めるとは思ってもみませんでしたし、EUから英国が離脱表明するという現実、巨大経済力を持つ中国が、政治体制はそのまま、規制市場を続けていることも驚きです。また、テロが頻発するようになり、地政学リスクが遠い話ではなくなり、ビジネスの場でも旅行者にとっても以前よりずっとリスクが高まっています。

10年前に比べると、残念ながら世界レベルで不安材料の方が多くなっている気はします。今から10年後の2027年がどのような世界になっているのかは誰にもわかりませんが、大胆な予想をしても、事実はそれを凌駕するであろうことを過去10年間が示しています。

個々人にできることは順応性をもって、都度世の中の動きに対応できるようにしておくことでしょう。10年前のコラムにも書きましたがニュートラルな立ち位置を保ち、偏り過ぎず、計画性をもつこと、この点については10年経ってもぶれずにお伝えしたい点ですね。

今後ともよろしくお願いいたします!

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員