米金利との関係に注目

2022年12月の日銀の金融政策決定会合で、10年債利回りの上限が拡大されると円相場は急騰した。そしてその次、2023年1月の会合で上限再拡大が見送られると、瞬間的に円相場は急落となった。以上のように、このところ日銀の決定に対する為替相場の反応は過敏なだけに、次回の3月会合の結果も、大きく相場を動かす可能性は要注意だろう。

日銀が10年債利回りの上限を0.25%に設定したのは2022年4月だった。これは2月のロシアによるウクライナ侵攻などを受けて、世界的なインフレが一段の拡大に向かい、米金利なども上昇が加速を始めたタイミングだった。

それまで日米の10年債利回り値動きは、ほぼ重なって推移していた(図表参照)。その関係が続いたら、米金利の上昇加速に連れる形で日本の10年債利回りも急上昇に向かう可能性があっただろう。金利上昇の拡大を回避することが、上限設定の目的と考えられた。

【図表】日米の10年債利回りの推移(2021年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ところで、そんな10年債利回りの上限を、2022年12月20日に日銀は0.5%へ拡大した。この頃、米国ではインフレのピークアウト感が広がり、10年債利回りも11月頃から大きく低下に向かっていた。日本の金利は米金利の影響を大きく受けるという構図においては、米金利の上昇が一段落し、低下に向かうようになった中では、日本の金利の上限を拡大しても金利上昇は自ずと限られるとの考え方も、上限拡大の判断に大きく影響したのではないか。

以上のように、米金利との関係に注目すると、3月会合での上限再拡大は見送られる可能性が高いのではないか。最近にかけて、米インフレ是正の鈍化、そして米景気減速懸念後退の兆しがあり、米金利も上昇再燃となっているためだ。米インフレ等の行方と、それを受けた米金利上昇を見極める前に、日本の金利の上限の再拡大、ましてや上限の撤廃を決めた場合、金利上昇に拍車がかかりかねない。

現行のYCC、金利上昇抑制策には批判も多いため、黒田総裁が勇退の前にどう対応するかに対する関心は高いだろう。上限をそのままにするか、それとも勇退前に撤廃して後人、新たな日銀の執行部に託す形をとるか。ただしそれを決める上では、米国のインフレ、景気といった経済状況と、それを受けた米金利の動向も重要な鍵を握っている可能性があるのではないか。