先週、S&P500は1.62%の上昇、ナスダック100は3.34%の上昇となりました。先週は様々なイベントが盛りだくさんの大変慌ただしい1週間でした。市場の方向性に大きな影響を与えるGAFA企業を含め、各社の第4四半期の決算発表が相次ぎ、FOMC(米連邦公開市場委員会)による利上げ、そして経済指標の発表がありました。
第4四半期の決算発表、市場予想並みの結果
決算発表の結果を全体的に見るとS&P500採用銘柄のうち、これまでに251社が発表を終えており、前年同期比では3.05%の減益となりました。62%の企業が事前予想を超えており、37%の企業が予想を下回っています。決算発表が始まる前の1月7日の時点では3.09%の減益予想でしたから、これまでのところでは市場予想並みの結果となっています。総じて素晴らしい決算発表ではないものの、リセッション懸念が騒がれる中、思ったほど悪くはないというのがマーケットの見立てではないでしょうか。
先週の注目は、GAFA企業の決算発表でした。2月1日(水)引け後に発表されたメタ・プラットフォームズ(META)は、売上高、広告収入などが市場予想を上回ったことに加え、40億ドル(発行済み株の10%に相当)の自社株買いを発表しました。同社に対する市場の期待が低かったこともあり、翌日(2月2日)株価は1日で23%も暴騰、市場全体のセンチメントを大きく変えました。
メタの決算を受けて期待が高まったアルファベット(GOOGL)、アップル(AAPL)、アマゾン・ドットコム(AMZN)については、翌日(2月2日)軒並み予想を下回る決算発表を行ったものの、株価の反応はまちまちでした。アップルについては、決算自体は予想を下回ったものの、アナリストの強気な見方を受け株価は2.4%上昇。広告収入、YouTubeなどの売上高が予想を下回ったアルファベットは2.8%下落しました。
2014年度以来の赤字を記録、来期について弱気のコメントを発表したアマゾンの株価は8.4%下落となりました。期待を裏切った決算発表を受け、アルファベットとアマゾンの株価は下がりましたが、先週1週間を通して見ると両社の株価はプラスで推移しています。
現在のマーケットのセンチメントは2022年と比べると大幅に改善していると言えるでしょう。
FOMCは無事通過、パウエルFRB議長の発言に変化も
マーケットのセンチメントの改善は、FOMCに対しても好意的な解釈を行うようになっています。
先週のFOMCでは、市場の予想通り25bp(ベーシスポイント)の利上げが決まりました。タカ派的な声明で始まりましたが、市場は恐れているほどの内容ではなかったという解釈をしています。
加えて、今回のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言のトーンは、これまでと比べると大きな違いが見られました。前回の12月のFOMCでの記者会見では、「(9月と比べると)インフレは悪化している」と述べており、今回も「(インフレ率は)依然として高すぎる」と述べています。一方、今回のFOMC後の記者会見では、「ディスインフレーションが始まった」という発言が出てきました。12月のFOMCでは使っていなかった「ディスインフレーション」(インフレーションが進行する中で、金融引き締め政策などにより物価上昇ペースが鈍化する経済状態のこと)という言葉が、今回13回も使われたのです。
2022年10月以降、経済指標はインフレの鈍化を示していたにも関わらず、FRBはそのような状況に反応していませんでした。しかし今回のFOMCで、明らかにFRBの考え方の変化が窺える発言が出てきました。また、パウエルFRB議長の「深刻な景気後退を起こさずにインフレ率を2%に安定的に戻すことは可能だ」という発言も市場に安堵感を与えたのではないかと思います。
米雇用は強いが結論づけるのは時期尚早
2月3日(金)に発表された1月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は51.7万人増と市場予想を大きく超える結果でした。失業率も53年ぶりの低水準とマーケット参加者を驚かせました。これを受けて長期金利が上昇し、先週前半に好調だったテクノロジー株が売られる展開となりました。マーケットが懸念するのも無理はないと思います。ただ、違う見方をすると、この状況は必ずしも悪いことではないかもしれません。
GAFAM企業は来期について、経済の悪化から業績を懸念する発言をしています。ただ、雇用がここまで強いのであれば、経済悪化は懸念で終わる可能性もあります。また、次回のFOMCまで7週間もあります。それまでに様々な経済指標が発表されるので、今ここで何らかを結論づけるのは尚早かもしれません。
想定外の上昇で無視できない変化
2023年に入ってから想定外の上昇を果たしているマーケットで、無視できない変化が起きています。年初から先週末までに7.7%上昇したS&P500は200日移動平均線を超えて推移し始めました。
2022年に大きく売られたハイベータ銘柄は2023年に入って大きくリバウンドして相場を牽引しています。ニューヨーク証券取引所上場銘柄で200日移動平均線を超えている企業の割合は現在69.4%まで改善しました。2022年S&P500が史上最高値を更新した2022年1月3日時点の割合が54.6%であったことを考えると、市場全体がより健全になっていると考えられます。
そんな中、米国でも未だマーケットに対して弱気の見方をしているプロの投資家も少なくありません。ブルマーケットは、悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち始めると言われています。私も、現在この言葉が気になってたまりません。
それを見極める上で、まだ決算発表が残っている企業の今後、来期よりも、2023年後半についてのガイダンスに注意が必要です。