先週の動き:ニューヨーク金先物価格は、タカ派的なFOMCを終え1,800ドル超を維持

先週末のニューヨーク金先物価格(NY金)は、12月13日の11月米消費者物価指数(CPI)、12月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)と注目の2つのイベントを挟み、やや荒れた動きとなった。

それでも週末12月16日の通常取引終値(清算値)は、1,800.20ドルと心理的な節目1,800ドル超を維持するとともに、テクニカル上の重要ポイントとなる200日移動平均線(12月16日時点で1,796.77ドル)を上回って終了した。

ただし、週足では10.50ドル、0.58%安の反落となり、1,800ドルを少し超えたところで横ばいとなった。200日移動平均線については、12月1日に約6ヶ月ぶりに上回った後に、上下しながらも、このラインを超えた状態を維持している。

12月13日に発表された11月の米CPIは、前年比の伸び率が7.1%と10月の7.7%から鈍化し、2021年12月以降で最小となった。

このところの米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げペースの減速観測(12月0.5%利上げ)を後押しするとの見方が強まり、為替市場では米ドルが全面安となり、米長期金利が急激に低下する中で、金市場は買いが先行する流れに転じた。この日NY金は一時6月27日以来の高値となる1,836.90ドルまで買われ、当日の終値は1,825.50ドルとなった。結局この双方が週を通しての高値となった。

12月14日に終了したFOMCは、2023年末時点の政策金利見通しを上方修正し、今後少なくとも0.75%の追加利上げが実施されることを示唆した。さらにインフレ抑制に向け、金融引き締めを長く続ける方針を示した。

FOMCの声明文発表およびパウエルFRB議長の記者会見を受けて、12月14日のNY金の時間外取引は急騰した前日終値比で6.80ドル安の1,818.70ドルとなっていた。つまり、株式市場などではタカ派的とされた結果に対し、金市場は一定の耐性を見せることになった。

ところが翌12月15日、NY金は30.90ドル安の1,787.80ドルと急落となった。この日はFRBによる、歴史的な金融引き締め策の継続が米国景気を後退させるとの警戒感が広がり、NYダウ30種平均が前日比764.13ドル安となるなど米国株式は大きく続落した。投資家が運用リスクを回避するリスクオフ・センチメントの急速な高まりが、株式市場からの資金逃避につながった。

この日のNY金の大幅安は、米ドルがリスクオフで主要通貨に対し買われ金売りにつながったというよりも、市場横断的なリスクオフ拡大の中で、換金売り(キャッシュ・アウト、現金捻出)の対象になったとみられた。背景には、前日までの6週間弱で10%強、190ドルほど値上がりしていたことがあり、益出し売りが出やすかったことがある。

注目されるのは12月16日の値動きだ。この日はFRBの複数の高官の金融引き締めに関するタカ派発言が伝えら、株価が続落すなる中、前日とは異なりNY金は上昇となった。逃避資金の矛先が金市場に向けられたとみられ、換金売りは早くも一巡、金市場の地合いの変化を感じさせることになった。冒頭で触れたように、NY金は反発し、節目の1,800ドルを上回って終了ということになった。

先週のコラムではNY金のレンジの予測を1,785~1,845ドル、国内金価格7,800~8,000円と想定した。対してNY金は1,782.00~1,836.90ドル、国内金価格は7,768~7,899円となった。米ドル/円相場が、想定よりやや円高に傾いたことで国内金価格の8,000円接近は見られなかった。

高水準の引き締め継続を示した12月FOMC、市場の楽観論牽制で株安の動きへ

注目の年内最後のFOMCは政策金利を0.5%引き上げ、誘導目標を4.25~4.50%とした。四半期に一度発表されるメンバーによる経済見通しによると、今後の金利見通しは2023年の予想中央値が5.1%となり、年明け以降少なくとも0.75%の追加利上げが示唆された。

結果が判明した東部時間14時少し前に、前日比6.80ドル安の1,818.70ドルで通常取引を終えていたNY金だが、声明文発表と経済予測公開、その後のパウエルFRB議長の発言に移行する中で、時間外取引の値動きは比較的限定的なものにとどまった。時間外取引も通常取引終値と同じ水準(終値1,818.70ドル)ということになった。

今回のFOMCについては、総じてタカ派的との評価になっている。それは直前に発表された11月のCPI上昇率が2ヶ月連続で事前予想を下回り、市場内にFRBがタカ派的姿勢を和らげるのではとのバイアスがかかっていたこともありそうだ。

パウエルFRB議長は利上げを続ける意向を強調するとともに、引き締めを早々に撤回してインフレ退治に失敗するリスクを改めて強調した。このところ市場では、米CPI上昇率の鈍化などから、米長期金利が低下し株式相場が大きく反発するなど、引き締め策の和らぎを先読みする動きが見られたが、パウエルFRB議長は「引き締め的な政策を金融情勢全般に反映させ続けることが重要だ」と発言、市場の楽観論を牽制したことが株安につながった。

2023年の金利見通し中央値が5.1%に切り上がり、現実的なターミナルレート(利上げ終着点の金利水準)は5.25%となった。これに関し、パウエルFRB議長は、「19人の政策メンバーのうち17人が金利のピークが5%を上回るとみており、以前のピークの予想よりも高くなった」とした上で、「次回の2023年3月の見通しでピークの金利を引き上げないと自信をもって言うことはできない」とも発言した。

つまりターミナルレートに関する不透明感は継続されることを意味するが、NY金の反応が限定的だったのは、いずれにしても利上げサイクルは終盤との判断がある。その一方、パウエルFRB議長は労働市場のひっ迫が続き、賃金上昇に伴うサービス価格の上昇など、インフレ鎮静化には時間がかかるとの認識を示し、引き締め環境は続くという見方を示した。この辺りがタカ派的と捉えられた。

FRB高官の発言から、NY金を売り材料に構図に変化の兆し

ここまで2週にわたりNY金に関して強気のスタンスで解説してきた。先週のコラムではタイトルを「米FOMC通過後に上昇が見込める金ゴールド(ゴールド)」とした。前述で「注目されるのは12月16日の値動き」と記載したが、ここからはそのことに関して詳述する。

12月16日は複数のFRB高官の発言が伝わりいずれもタカ派的と捉えられ、市場ではリスクオフの動きが続くことになった。

まずFOMC後の最初の発言となったのがNY地区連銀のウィリアムズ総裁で、ブルームバーグTVのインタビューで、インフレ圧力が続き、FRBが2023年、市場の予想以上に政策金利を引き上げる可能性があるという見解を示した。金融政策は景気に対し、制約的となる必要があると強調した上で、2023年のピーク金利がFOMCで示された、当局者の見通しの(中央値)5.1%よりも「高くなる可能性がある」と発言した。

ただし、米国が景気後退に陥るとは想定していないとも述べた。サービス業のインフレ率の高さは依然として問題で、FRBの行動を必要としつつも、賃金の伸びは高いが、1970年代のように全体的に物価を押し上げる力とはならないとも発言。歴史的な引き締め策ではあるが、ソフトランディングは可能との見方がみられた。

そして、サンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁はアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)主催のオンラインイベントで発言。政策金利がピークに達した後、約1年その水準にとどまると考えることは「合理的」だとした。必要に応じ、より長期間にわたり金利を同水準で維持する用意があるとして、当局者の「誰もが2023年は金利を据え置くという考えだ」と発言している。

このような一連のタカ派発言を受け、すでに景気見通しに関し、警戒モードに入っていた市場はさらに反応し、この日も米国株式市場は売りが先行し、水準を切り下げた状態で取引を開始し、主要株式指数はともに3営業日続落となった。その一方、NY金はすでに触れたように上昇し、1,800ドル超で取引を終了した。

これまで政策金利の上昇はじめ引き締め強化を意味するFRB高官のタカ派発言は、押しなべてNY金の売り材料となってきた。そのまま米長期金利の上昇につながり、米ドル高要因となることで、NY金にファンドの(アルゴリズムの)売りが出たことによる。

ところが、ここにきてFRB高官のタカ派発言は、そのまま景気見通しに対する悪材料と捉えられ、米長期金利はむしろ低下し、米ドル売り材料となっている。「タカ派発言=NY金売り手掛かり材料」という構図は変化しており、それゆえNY金の反応も変化している点に留意すべきだと思う。市場はFRBの引き締め過多、オーバーキル状態を懸念しており、今後の米経済指標に対する反応はさらに大きくなるとみられる。

今週の展望:重要インフレ指標としてマークする11月のPCEコアデフレータに注目。NY金は1,790~1,850ドル、国内金価格は7,800~8,000円を想定

今週は、FRBが重要インフレ指標として注視している11月のPCEコアデフレータ(エネルギー・食品を除いた個人消費支出価格指数)に注目したい。

市場予想は前年比で4.6%増と、10月の5.0%から伸びの鈍化が予想されている。仮にそうなると、2022年10月来で最低の伸びになる。先週の11月CPIの鈍化にNY金は大きく反応したが、鈍化すれば上値追いの手掛かり材料となりそうだ。

11月米小売売上高や12月製造業・サービス製造業PMIが予想外に悪化するなど、景気減速が明らかになりつつある中で、米国の住宅関連や12月消費者信頼感指数などの結果が注目される。

今週の想定レンジとして、NY金は1,790~1,850ドル、国内金価格は7,800~8,000円を想定している。

【図表】ゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券