モトリーフール米国本社、2022年12月6日 投稿記事より

主なポイント

・2022年は株式市場にとって波乱の年だったが、ウォール街のアナリストは株価についておおむね楽観的な見方を継続している
・目標株価が高く設定されている高成長企業は、2023年に株価が上昇する可能性がある

ウォール街の一部アナリストが2023年の株価上昇を予想する、成長性が高いと考えられる3銘柄

2022年は悪い意味で歴史に残る年となっています。債券市場は過去最悪の年となっており、S&P500指数の上半期リターンは52年ぶりの低水準となり、米連邦準備制度理事会(FRB)は株価が急落する中、積極的に金利を引き上げています。投資家にとって安全だと考えらえる場所は、あまり見当たりません。

しかし、こうした厳しい状況にもかかわらず、ウォール街の大半のアナリストは楽観的な見方を続けています。なぜなら、景気後退や弱気相場というのは短期間で終わることが多いからです。米国の主要株価指数は、調整や暴落、弱気相場をいずれ打ち消してくれるため、楽観的でいて損することはないでしょう。

こうした中で、極端なほど楽観視しているアナリストもいます。ウォール街のアナリストの中で最も高い目標株価に基づくと、以下に挙げる高成長企業は、2023年に株価が393%~1,153%上昇する可能性があります。

プラグ・パワー:水素燃料電池を手掛ける急成長企業

H.C.ウェインライトのアナリスト、アミット・ダヤル氏によると、プラグ・パワーの株価は78ドルに達する可能性があるとのことです。つまり、2023年中に足元の水準から5倍近くに上昇するということです。

ダヤル氏が楽観視する背景には、いくつかのカタリストがあります。何よりもまず、ほとんどの先進国では、再生可能エネルギーへのシフトが進んでいます。プラグ・パワーは、自動車やフォークリフトなどの産業機器向けに燃料電池を供給し、また燃料電池自動車が充電するために必要なインフラを構築する上で重要な役割を果たすとみられます。

さらにダヤル氏は、売上高を急速に伸ばし続けながら営業利益率の向上を図る、経営陣の取り組みを好感しています。プラグ・パワーは2022年に入り2021年11月中旬にニューヨーク州で稼働した燃料電池ギガファクトリーと、サービスコストの低い次世代「GenDrive」ユニットの市場投入により、利益率向上は可能であるとダヤル氏は指摘しています。

中でも最大のカタリストは、他社との提携や合弁事業を築くプラグ・パワーの能力かもしれません。同社は2021年初めにSKグループから出資を受け、またルノーとの合弁事業を通じて欧州の小型商用車市場におけるシェア獲得を狙っています。こうしたパートナーシップにより、同社は、売上高が2021年の5億ドル強から2025年には30億ドルに達すると予想しています。

しかし(これは大きな「しかし」です)、現状ではプラグ・パワーは利益を上げていません。さらに、米国における景気後退の可能性が高まり、先進国の多くでインフレ率が高進する中、企業や政府はグリーンエネルギーへの転換や投資を先送りせざるを得なくなる可能性があります。

プラグ・パワーの時価総額は90億ドルを上回り、将来の売上成長の多くはすでに織り込み済みとみられます。足場をしっかり固め、利益を上げるまでは、78ドルの目標株価を正当化するのは難しいかもしれません。

バイオナノ・ジェノミクス:ゲノム解析企業

高成長企業のバイオナノ・ジェノミクスは小型株に分類されるゲノム解析企業です。オッペンハイマーのアナリスト、フランソワ・ブリスボア氏によれば、バイオナノ・ジェノミクスの株価は2023年に12ドルに達する可能性があり、上値余地は474%です。

現在は、オッペンハイマーでブリスボア氏がカバーしていますが、最初にバイオナノ・ジェノミクスの株価が12ドルになると予想したのは前任のケビン・デジータ氏です。デジータ氏によると、同社の光学ゲノムマッピング(OGM)システム「サファイア(Saphyr)」は、他のOGMシステムと比べて構造的ゲノム変異を特定するスピードが速く、低コストで、また多くの点でより効果的であることが実証されています。

安心材料として、バイオナノ・ジェノミクスには、Saphyrの有効性を実証するデータがないという心配はありません。同社は過去2年間に、さまざまな種類のがんや遺伝性疾患、習慣性流産といったあらゆる種類の構造的変異を検出するSaphyrの能力を示す、多くの研究結果やデータを発表してきました。理論的には、Saphyrは研究者や製薬会社が治療困難な病気と闘う上で重要な役割を果たすことができます。

もう1つの好材料として、バイオナノ・ジェノミクスのキャッシュポジションは健全な水準にあります。2021年初めに株価が急騰したとき、経営陣は株式を発行して多額の資本を調達するという賢明な選択をしました。2022年9月末時点で同社は、約1億8,000万ドルの現金、現金同等物、その他有価証券を保有しています。これだけあれば、イノベーションを続け、Saphyrの有用性の拡大を模索する中で、四半期損失をカバーするのに十分です。

では、バイオナノ・ジェノミクスの株価が12ドルどころか、2.09ドルにとどまっているのはなぜでしょうか。これは、Saphyrが米食品医薬品局(FDA)に承認された診断システムではないことと大きく関係しています。FDAの承認がないと、Saphyrを使えるのは米国内に限定されます。SaphyrがFDAから承認されるのか、そしてそれはいつになるのかは、明確ではありません。

保有現金を考えると、株価がこれ以上下落することはないかもしれませんが、FDAの支援がないと、ブリスボア氏やデジータ氏が主張する上値は達成できそうにありません。

ノババックス:バイオテクノロジー企業

H.C.ウェインライトのアナリスト、バーノン・バーナディーノ氏は2022年3月にノババックスの目標株価を更新し、なんと207ドルとしました。2022年12月2日の終値に対して、上値余地は驚異の1,153%です。

ノババックスをカバーするアナリストの中で最も高いバーナディーノ氏の目標株価は、同社が開発した、タンパク質をベースとした新型コロナウイルスワクチン「NVX-CoV2373」の世界での販売が承認されるという見方に基づいています。

モデルナやファイザー/ビオンテックのワクチンがメッセンジャーRNA(mRNA)テクノロジーを採用しているのに対し、ノババックスのワクチンの特徴は、人体に無害のスパイクタンパク質の成分を体内に導入し、コロナウイルスとの戦い方や感染を予防する方法をヒトの免疫システムに教えるという、従来から使われていた方法に依存しています。ここで考えられるのは、mRNAワクチンの接種を躊躇していた人も、ノババックスのタンパク質ベースのワクチンであれば接種に前向きになるかもしれないということです。

もう1つの好材料は、NVX-CoV2373の有効性です。これまで、ワクチン効果(VE)が高水準とされる90%に達している新型コロナウイルスワクチンは3種類しかありません。モデルナ(94.1%)とファイザー/ビオンテック(95%)、そしてノババックスは2021年に米国とメキシコで実施した臨床試験で90.4%でした。VEは有効性を示す指標の1つにすぎませんが、ノババックスが初回接種と追加接種の世界的な主流ワクチンの1つとして維持されるには、十分に強力な数字です。

バイオナノ・ジェノミクスと同様に、ノババックスも現金を潤沢に保有しています。9月末時点の現金および現金同等物は12億8,000万ドルで、将来の転換社債の返済と研究を継続するための費用としては十分です。さらにノババックスは、新型コロナウイルスとインフルエンザの混合ワクチンを市場に送り出す最初の創薬企業の1つとなる可能性があります。

とはいえ、2023年中に207ドルというのは、かなり無理のある株価と思われます。同社は緊急使用の申請の遅れや生産上の問題にたびたび直面し、2022年には先進国市場で確実視されていた多くのチャンスを逃しました。今後、同社は先進国での定期的な追加接種と新興国での初回接種に注力するとみられます。

ノババックスの足元の株価は極めて魅力的ですが、ウォール街がそれに気づくのは数四半期先になると思われます。売上高が伸び続け、赤字が縮小し、混合ワクチンがうまくいけば、2022年末よりもはるかに高い株価で2023年を終えることができると考えられます。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Sean Williamsは、ノババックスの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はモデルナ、ファイザーの株式を推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。