先週、仮想通貨に関する改正法案が閣議決定されたニュースはご覧になったことと思います。
ちょうど2年前の今頃、ビットコインが話題になったことを覚えていらっしゃるでしょう。最大の取引所が、数百億円相当とも云われるビットコインを消失し、経営破綻したのです。自分の資金が消えて泣き寝入りした人も多く、大きな騒動になりました。
ビットコインはそもそもネットゲームのような位置づけから始まっていました。そのゲーム感覚のまま、実際にも通貨の代用品のような役割を担い、法整備されないまま利用者が増えていきました。
そういう意味で2年前はリスクが高いと警鐘を鳴らしましたが、その一番の理由は「実物資産や政府による信頼性の裏付けは何もない」ということ。その時は政府の信頼度が低い超新興国に投資するにも近いという書き方をしました。
ただ、こうした上手く使えれば利便性の高いというものはまず先駆者たちが利用し、そのニーズが徐々に一般に広がることで、後から国が追いかけて法整備するというのは過去においても、特にITの分野では行われてきたことです。
逮捕者が出るという事態を超えて、ビットコインは消滅することなく、大暴落することなく引き続き存在し取引されてきており、ついに国も乗り出さないわけにはいかなくなったということですね。
麻生金融担当相は記者会見で「金融とITの融合が進展している中、環境変化に日本の金融機関が戦略的に対応できるようにすることが喫緊の課題」と語ったとのことですが、まさに仮想通貨取引が法的に認められる(方向)と同時に規制も増えていくということです。
ところでノン・デリバラブル・フォワード(NDF)という取引をご存知でしょうか。
先物市場が不整備であったり、資本規制を行っている新興国の通貨などのヘッジ目的で金利水準などから理論的に先渡しレートを計算します。取引所はありませんから相対取引で取引約定し、決済日には約定レートと当日の実勢直物レートの差額に応じて当事者間の損益を計算、決済するというものです。これらの通貨のNDFレートについては言ってみれば、通貨当事国の責任外(オフショア)で「仮想的」に先物取引をしていることになりますから、金融業界の一部でも仮想通貨取引もどきのことは90年代から行っていたとも言えますよね。
ビットコインとは少々異なりますが、要は利便性を先んじて色々なことを考え出す先駆者がいるということ。状況を十分に理解し、把握しているのではない限り、法整備が整った上で参加する方が一般的な投資家にとっては安全と言えそうですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員