先週、米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の利上げを決定しました。
米国だけではなく、世界的にインフレ懸念から金融引き締めによる金利上昇が進んでいる中、日銀だけが金融緩和政策を続けている状況です。
日本の金利もいずれ上昇する可能性がある
確かに日銀はインフレ率が高まったとしても賃金の上昇が伴わない場合、持続性がないと言う判断をしています。
2%を超える消費者物価指数になっても、引き続きマイナス金利政策を含めた異次元緩和を続ける方針です。
逆に言えば、もし賃金の上昇が始まれば、日本の金利もいずれ上昇する可能性があると言うことになります。
金利上昇は債券、株式、不動産にはマイナス
では日本でも金利上昇が始まると、どのような影響があるでしょうか。
政策金利の変更によって短期金利が上昇する、あるいはイールドカーブコントロールの手法が変わり長期金利が上昇するといった事態になれば、マーケットはかなり動揺するはずです。
金利上昇は当然のことながら債券価格を下落させます。また、株式も経済成長が伴わなければ、割引率が高くなり株式評価は下落するため、マイナス要因になります。
さらに、ここ10年上昇を続けてきた国内不動産価格も金利上昇により借り入れコストの上昇が嫌気され、価格は下落する可能性があります。
日本の財政赤字問題も悪化させる
国内金利の上昇は資産運用マーケットにマイナスの影響を与えるだけではありません。
日本の財政赤字問題に対してもマイナスの影響があります。日本政府の財政赤字は1,200兆円を超え、追加の経済対策などによって、さらに悪化を続けています。
国債の利払いは金利上昇により増大します。新規の国債発行の金利負担が高まっていくことにより、財政状態はさらに悪化していくことは必至です。
日銀の保有する国債にもマイナスの影響
金利上昇が影響するのは日本政府だけではありません。日本国債を大量に保有する日銀にも影響を及ぼします。
保有している国債は購入時よりも金利が上昇すれば評価額は下落します。金利上昇が一定以上になれば、保有している国債が評価損に転じる可能性が出てきます。
日銀のバランスシートのクオリティが劣化することになり、中央銀行に対する信任が低下します。これは円の信任低下を通じて為替市場にも影響を与えます。
日本の金利上昇は想定以上のインパクトがある
このように日本の金利上昇が実際に発生すれば、マーケットには大きな驚きが生まれ、想定以上の動揺が生まれる可能性があります。
資産運用マーケットのマイナスだけではなく、国や中央銀行にも大きな影響が出てきます。
日銀の黒田総裁は、現在も金融引き締めをする状況にはなく、金融緩和政策を継続していくと言うコメントを繰り返しています。
しかし、2023年春には黒田総裁は退任し、新たな日銀総裁が就任します。これから半年は次期総裁が誰になるかを巡って、神経質な状況が続くことになります。
金利上昇に過剰な懸念は禁物
確かに金利が上昇すれば、マーケットに大きなインパクトがあります。ただし、日銀が金利上昇を容認するような展開になるかどうかはまだ判りません。
金利上昇となれば、大きなリスクが顕在化するため、神経質になる気持ちはよくわかります。しかし、過剰な警戒は資産運用にはマイナスになる可能性もあります。株式や不動産のようなリスク資産を売却してしまえば、せっかくの収益機会を逃してしまうことにもなりかねません。
慌てて対応するのではなく、しばらくは日本国内の経済データや日銀首脳のコメント等に耳を澄まして、冷静に判断していく必要があると思います。