モトリーフール米国本社、2022年11月1日 投稿記事より

主なポイント

・ゲーム開発会社のSpry Foxを買収したが、プレスリリースや財務報告書に記載するほどの金額ではない
・これまでにゲームスタジオ4社を買収し、2つのスタジオを自社で立ち上げ
・ネットフリックスは、ゲーム界のネットフリックスになろうとしており、動画配信を開始した時と同じ戦略を取っている

ネットフリックスは小規模な買収を積み重ねた壮大なゲームプランを構築中

動画配信サービス大手ネットフリックスがモバイルゲームの配信を開始して、1年近くが経ちました。当初は5タイトルでしたが、今ではパズルゲームやカードゲームのようなシンプルなものから、高速の自動車レースや複雑な冒険物など、35タイトルに増加しています。

しかし、これはネットフリックスのゲーム事業における野望のほんの始まりにすぎません。現時点でさらに55タイトルが制作段階にあり、ゲーム開発スタジオを次々と買収しています。今週も、「Cozy Grove」や「Alphabear」といった健全なオリジナルのゲームシリーズを開発するSpry Foxの買収を発表したばかりです。

Spry Foxを傘下に収めたことで、ネットフリックスが持つゲーム開発スタジオは6つになりました。投資家は、同社の広告付きストリーミングサービスや、今後予定されているパスワード共有の制限ばかりに注目しているかもしれませんが、ネットフリックスはゲーム事業の拡大を、手を緩めることなく進めています。

ネットフリックスは、モバイルゲームの分野で何を目指しているのでしょうか。そして、その計画の中で、Spry Foxの買収はどのような位置付けなのでしょうか。

ネットフリックスとビデオゲーム

ネットフリックスのゲーム開発に対するビジョンは、常に意欲的でした。2021年11月2日に行われたゲーム配信開始発表の中で同社は、「ドラマや映画といった動画番組と同様に、ゲームもさまざまなプレースタイルに向けて開発し、ゲームの初心者でもマニアでも、あらゆるプレーヤーに楽しんでもらいたいと考えている」と語りました。

つまり、ネットフリックスは、ビデオゲーム界のネットフリックスになろうとしているのです。次のターゲット市場に向けた手法を選ぶのに、自らの過去の成功例を参考にするのは当然のことでしょう。

同社はこれまでに、幅広いスタイルとジャンルにわたる数十タイトルのゲームを配信してきました。独立系スタジオ4社を買収した他、小規模ですが2つのスタジオを自社で立ち上げています。この取り組みを統括しているのは、ゲーム事業のバイスプレジデントであるマイク・ベルドゥ氏であり、同氏はかつて、メタ・プラットフォームズの仮想現実(VR)部門を率いていました。

ネットフリックスのゲーム戦略を見ると、同社が動画配信サービスに乗り出した頃を思い出します。動画配信プラットフォームと同様に、ゲームでも、既存会員に対する無料の追加サービスとして提供が開始されました。動画配信も、当初は番組数も、対応するハードウェアの選択肢も少なく、とても魅力的なサービスとは思えませんでした。ゲーム事業も今はかなり小規模であり、独立系調査会社によると、ネットフリックスの動画配信ユーザーのうち、同社のゲームをプレイしたことがあるのは1%にも満たないことが示されています。

とはいえ、いくつかの重要な点で、状況は大きく異なります。ネットフリックスは、動画配信市場における先駆者であり、イノベーターでした。しかし、モバイルゲームに関しては、既に確立された多くの専門家集団が目の前に立ちはだかっています。成熟分野に後から参入することに加え、ネットフリックスはこれまでとは違う手法を取っています。

例えば、ネットフリックスのゲームは、アンドロイドやiOSのアプリストアからゲームをインストールして立ち上げるという複数のステップが必要になります。このプロセスはそのうちに改善されると思いますが、いずれにしても、ネットフリックスが通常提供している、超シンプルでユーザーフレンドリーな方法ではありません。

ネットフリックスの計画におけるSpry Foxの位置付け

Spry Foxの買収は、ネクスト・ゲームズを6,500万ユーロ(6,450万ドル)で買収したときほど大規模でもなければ、大きなニュースにもなっていません。買収額が公表されていないことも、金額が小規模であることを示唆しています。

とはいえ、Spry Fox側が提示額に満足したことは明らかです。同社は今回の買収に関する声明を発表し、「これで資金面の心配をする必要がなくなり、優れたゲームの開発にお金をかけることができる」と述べました。ネットフリックスの会員数が、それだけの安心と経済的な支えになるということです。

一方のネットフリックスにとっては、この買収は長期計画におけるちょっとした出来事の1つでしかありません。

ネットフリックスはブログで、「従業員とプレーヤーの喜びを追求し続ける、という価値観が似ているスタジオと一緒にゲームを作ることを楽しみにしている。我々のゲームの旅は始まったばかりである」と述べています。

ネットフリックスが足を踏み入れようとしているのは、とても巨大な池です。調査会社スタティスタによれば、モバイルゲーム市場の売上高は、2022年に世界全体で1,500億ドルを上回る見通しです。これは、動画配信サービス市場の約2倍の規模に相当します。

ネットフリックスは、動画配信サービスのようには市場を支配することはできないでしょうが、活気あふれるモバイルゲーム市場にわずかでも足場を築くことができれば、大きな収入源になるはずです。現時点でゲームは無料の追加サービスにすぎないため、もちろんそれはまだ先の話です。

しかし、ネットフリックスはいずれ、ゲームから大きな収益を得るようになるでしょう。同社が最初に動画配信を行ってから、DVDレンタル事業を「Qwikster」として分離し、動画配信のサブスクリプションサービスに特化すると決めるまでに、4年かかっています。

つまり、ビデオゲームのプラットフォームが勢い付き、ユーザーの関心を集め始めれば、ネットフリックスのゲームも3~5年で収益を生み出すようになるはずです。同社のビジネスモデルは再び多様化に向かっており、長期投資家にとっては良いことであるに違いありません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。フェイスブックの元市場開発担当ディレクター兼スポークスパーソンであり、メタ・プラットフォームズのMark Zuckerberg CEOの姉であるRandi Zuckerbergは、モトリーフール米国本社の取締役会メンバーです。元記事の筆者Anders Bylundはネットフリックスの株式を保有しています。モトリーフール米国本社は、メタ・プラットフォームズおよびネットフリックスの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。