モトリーフール米国本社 – 2022年10月18日 投稿記事より

主なポイント

・アマゾン・ドットコムのBuy with Primeはショッピファイにとって大きな脅威と思われていた
・アマゾン・ドットコムは倉庫の閉鎖を進めており、Buy with Primeが予想されていたほど脅威ではないことを示唆している
・2021年のピークから85%下落しているショッピファイ株は、今が絶好の買い場

アマゾン・ドットコムの新サービスは、スロースタートとなる見通し

Eコマース企業のショッピファイほど、年初来で株価が下落している企業は数少ないでしょう。

株価は、1年ほど前に付けた最高値から85%ほど下落しています。かつての人気銘柄も、2021年との比較によるベース効果に加え、消費者のEコマース離れにより、成長の鈍化に直面しています。経営陣の交代、突然の株式分割、赤字転落など、ショッピファイを巡ってはさまざまなことが起こっています。

しかし、ショッピファイの株価が2022年になって急落した理由はもう1つあります。アマゾン・ドットコムが新たに打ち出した「Buy with Prime」により、投資家は、ショッピファイの貴重な収入源が奪われてしまうのではないかと懸念しました。

「Buy with Prime」とは

従来、アマゾン・ドットコム・プライムで最も人気のある特典は、プライム会員はプライムマークの付いたすべての商品について、2営業日以内の配送が無料になることでした。

アマゾン・ドットコムはこの特典を、サードパーティの小売企業がそれぞれの自社サイト上でも使えるようにしました。この動きは、競合他社、中でもショッピファイを弱体化させ、同社にとって最も貴重な収入源である決済を奪うことを目的としているとみられます。ショッピファイのプラットフォーム上には175万社を超える小売企業が出店していますが、その大半が将来的にBuy with Primeを利用するようになる可能性があります。ショッピファイのトビ・リュトケCEOは当初、Eコマースのエコシステムの拡大につながるとしてBuy with Primeを歓迎していましたが、9月には、Buy with Primeの配送プログラムへの登録がショッピファイの利用規約に違反すると指摘しました。

アマゾン・ドットコムが4月に新サービスを発表したことを受け、ショッピファイの株価は急落しました。発表当時、新サービスの利用は招待制とされていましたが、現在でも新サービスへの参加はキャンセル待ちの状態です。アマゾン・ドットコムは9月、Buy with Prime会員のトラフィックを促進するために、アマゾン・ドットコム、フェイスブック、インスタグラム上に広告を出すなど、マーケティングを強化すると発表しました。

Buy with Primeに登録している小売企業の数は不明ですが、現在、このサービスを利用しているのは、アマゾン・ドットコムのフルフィルメントサービスを利用している出店者、つまり以前からアマゾン・ドットコムと関係のある企業に限られています。

アマゾン・ドットコムと取引のない加盟店を募集するのは難しいかもしれませんが、新サービスには、恐れていたようなショッピファイをつぶすほどの勢いはなさそうです。

ショッピファイにとって本当に脅威なのか

ブルームバーグは9月に、アマゾン・ドットコムが42ヶ所の倉庫について閉鎖または開設計画を断念し、さらに21ヶ所について開設を延期すると報じました。

このニュースは、アマゾン・ドットコムの売上成長が企業側の予想を下回っていることを示唆しています。同社はさらに、小売部門の事務職の採用を凍結すると発表しました。2022年2回目となる「プライムデー」の開催を決めたのも、年末商戦の前に余剰在庫を処分しておきたいという思惑があるとみられます。

ショッピファイは、Eコマース分野の小規模プレーヤーではありません。年間流通総額(GMV)は2,000億ドルを超え、むしろ世界最大の小売企業の1社と言えます。ちなみに、アマゾン・ドットコムの2021年のGMVは6,000億ドルを上回りました。

アマゾン・ドットコムは、プラットフォーム上の取扱量ではショッピファイの3倍に上るかもしれませんが、それでもショッピファイの売上高に食い込むには、大幅な能力拡張が必要でしょう。既存倉庫の閉鎖や新倉庫の開設延期を決定したことは、Buy with Primeが、ショッピファイにダメージを与えるほどには普及していないことを物語っているとみられます。あるいは、Buy with Primeは導入が難しく、ショッピファイの加盟店がすぐに利用できるようにならないということかもしれません。

ショッピファイの投資家にとっての意味合い

ショッピファイの経営陣は、目下直面している逆風が下半期も続くとの見通しを示しましたが、長期的に見れば、Eコマース市場は従来の成長軌道、すなわち米国市場では年率15%前後の成長率を回復するはずです。

10月27日に予定されているショッピファイの第3四半期決算が予想を上回れば、株価は大きく押し上げられる可能性があります。アナリストは、売上高が前年同期比16%増の13億ドル、調整後1株当たり損失が0.11ドルと予想しています。

株価が最高値から85%近く下落しており、Buy with Primeの脅威が誇張気味であることを考えると、今はショッピファイ株を買う絶好の機会かもしれません。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。アマゾン・ドットコム・ドットコムの子会社であるホールフーズ・マーケットのCEO、John Mackeyは、モトリーフール米国本社の取締役会のメンバーです。元記事の筆者Jeremy Bowmanは、アマゾン・ドットコム・ドットコムおよびショッピファイの株式を保有しています。モトリーフール米国本社はアマゾン・ドットコム・ドットコムおよびショッピファイの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは以下のオプションを推奨しています。ショッピファイの2023年1月満期の1,140ドルコールのロング、ショッピファイの2023年1月満期の1,160ドルコールのショート。モトリーフールは情報開示方針を定めています。