先週のS&P500は4.77%、ナスダック100は5.77%の下げで1週間を終えました。

インフレがピークをつけただろうとの期待感から前週S&P500は3.65%上昇しました。しかし先週火曜日(9月13日)に発表された米CPI(消費者物価指数)は、インフレ改善に対する期待を裏切る内容となり、S&P500は1日で4.3%ほど下落する展開となりました。

インフレのピークアウトは時間の問題

なかなかピークをつけない頑固なインフレ指数ですが、8月30日から発表されている米国のインフレ関連の経済指数14のうち、12については下落しているというデータもあります。家賃など下がるまでにタイムラグがある部分もありますが、コモディティ含め多くの項目が下がってきているので、総合指数としてのインフレがピークアウトするのは時間の問題ではないかと考えています。

今週開催される予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)では75bp(0.75%)の引き上げは避けられず、ひょっとすると100bp(1%)の利上げもありうるのではないかという懸念もコンセンサスになってきています。

米国株式市場のボラティリティが激しい背景

先週火曜日(9月13日)、S&P500は1日で4.3%下落し3,932で引けていますが、この日は4,000レベルを割った辺りからCTA(商品投資顧問)による先物売り(130億ドル相当、約2兆円)が入り、午後なると今度はレバレッジETFの売り(121億ドル相当、約1.7兆円)が入り、市場の下げを加速させた模様です。

そんな中、米国の個人投資家は、ネット(買いから売りを引いた額)で20億ドル相当(約3,000億円)を買っていたようです。これは2022年に入って2回目に大きな資金のインフローとなりました。個人投資家が2022年で最も株式を買ったのは1日でS&P500が3.6%下落した5月5日のことで、この日の個人投資家のインフローは1日にネットで26億ドル(約3,700億円)となっていたそうです。

では、米国の個人投資家が何を買っていたかというと、SPDR S&P 500 ETF(SPY)(ベンチマーク:S&P 500 指数)、インベスコ QQQ トラスト シリーズ1(QQQ)(ベンチマーク:ナスダック100指数)といったETFや、アップル(APPL)やテスラ(TSLA)のようなブルーチップだと言います。

午後はレバレッジ関連の売りが目立ちましたが、昔はレバレッジETFという金融商品は存在していませんでしたので、こういった新しい金融商品が市場のボラティリティを高めていると言えます。

2022年はとにかく株価が乱高下する相場が続いています。例えばナスダック総合株価指数は1日で4%以上の下落を7回演じています。2020年が10回ですので、このペースで行くと2022年も10回を超えそうです。

また、金曜日はトリプル・ウィッチングということで株価が乱高下しやすい日です。2022年7月までの過去1年間のトリプルウィチングでは、S&P500は平均1.4%下落していますが、その後については平均で1.38%上昇となっています。

ただ、もう少し長いスパンで見ますと、9月13日の下げでマーケットにテクニカル的なダメージが起きたので、今後3週間ほどマーケットは弱含みの展開になるのではないかと考えています。最悪のシナリオとして、S&P500が3,650〜3,750のレンジあたりまで下がる心の準備はしておいた方が良いかもしれません。ただし、下値は下がってもそれくらいだと思います。

米国株、10月以降のアノマリーは強い見通し

株価が乱高下する、つまりボラティリティの高いマーケットは続くものの、10月に入ってからマーケットは上昇すると思います。これは以前のコラムでも述べている通り大統領就任2年目の米国株の季節性に従うと、10、11、12月の米国株は強そうだということです。

逆張り指数として見る投資家のセンチメントも強気に考える理由の1つです。バンク・オブ・アメリカの顧客調査によると、現在52%の顧客が株式のアロケーションをアンダーウェイトしているそうです。この52%というのは歴史的に非常に高い数字であり、テクノロジーセクタ−が底打ちしたのはリーマンショック、金融危機の際の2008年10月より高いレベルです。

加えて、個別株のファンダメンタルズをみると歴史的にも割安な銘柄が増えてきています。例えば、ウォール街のアナリストによるアップル(AAPL)の潜在的な株価のアップサイドは20%であり、マイクロソフト(MSFT)では 35%、アルファベット(GOOGL)は 39%、アマゾン(AMZN)は 36%などとなっています。

マーケットが上昇に転ずるトリガーは、ある程度高止まりしたとしてもインフレがピークをつけたかの確認でしょう。これは来るかどうかわからないインフレのピークを待っているのではなく、いつ来るか、という時間の問題だと思います。