先週S&P500は4.26%、ナスダック100は4.45%それぞれ上昇して終わりました。先月1ヶ月間のS&P500のリターンは9.1%の上げで、2020年11月来の上昇となり、1999年末以降6番目に良い結果の月となりました。
第2四半期の決算発表については、これまでのところS&P500採用銘柄のうち277社が決算発表を終えています。そのうち63%の企業が事前予想を上回る決算発表を行なっています。
悲観的な環境下でこそマーケットは上がりやすいことを再認識
私が米国のマーケットを長い間見てきて時々感心することがあります。それは、「どう考えても株価は上がらない」と思うような最悪の環境下でも、サプライズなニュースをきっかけに株価が上がり始めることです。
出口の見えないロシアによるウクライナ侵攻、41年来のインフレ、リセッション懸念、米国経済の先行きや企業業績に対する不安などを考慮すると、「常識的な」考えでは株価は下がると思うのが普通でしょう。
先週、その流れを変えたのがアップル(AAPL)、アマゾン(AMZN)やアルファベット(GOOGL)といったGAFAM企業の決算でした。GAFAM企業に対する期待感は決して高くない中、予想を上回る決算発表を行い、マーケットを押し上げたのです。
今回、株価が上がると思っていた人はそれほど多くないようです。私が先週末、Twitter上で行なったアンケート(回答数:1,842)によると、6月16日安値からこれまでの米国株式市場の上げは「想定内のことであった」と答えたのは37%であり、63%の回答者は「想定外であった」と答えています。多くの人にとって今回の上げが予想外だったことがうかがえます。
7月4日付のコラムでは、悲観的な環境下でこそマーケットは上がりやすいのだという考え方をご紹介しましたが、結果的に今回もその通りの展開となりました。
実は、7月11日付のコラムにて2009年からのデータで、決算発表が始まる前の4週間の間にS&P500の業績の下方修正が起きた場合、その後6週間でS&P500は平均1.65%上昇しており、同指数がプラスになる確率は79%であると説明しました。決算発表が行われるまでに、業績予想に対する見方が悲観的で株価が下落した場合、決算発表が始まった後株価は上昇する傾向があるという意味です。今回も同様の動きになりそうだと考えています。
これまで懸念視されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)による利上げについても、今回の2回連続となる75ベーシスポイント(0.75%)の利上げは株式市場に対してノンイベントとなり、むしろパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の今後の利上げの方針についての発言が好感される展開となりました。
期待薄だったGAFAM、決算発表で底力を証明
今回のGAFAMの決算発表は、なぜこれらの企業がGAFAMと呼ばれ特別視されているかを証明する内容だったと思います。アップルのティム・クックCEOによると同社のデータでは、「iPhoneの販売に(ネガティブな)マクロ経済的な影響があるという明らかな証拠はない」と説明し、売上は加速するとしています。また、採用も継続すると発表しました。懸念されていたサプライチェーンの供給問題についても「改善がみられる」としています。
また、アマゾンについては事前予想の売上を上回り、来期についても予想を上回るという楽観的な見通しを示し、株価は1日で10%上昇し、全体市場を押し上げることになりました。
今週の注目イベント
GAFAMの決算発表は終わりましたが、決算発表はこれからも続きます。加えて今週の市場の注目は、今週金曜日(8月5日)に発表される米国の7月雇用統計です。ブルームバーグのコンセンサスによると、非農業部門雇用者数は前回の37.2万人に対し、25万人の予想となっています。