先週S&P500は2.2%下げで終わりました。6月の1ヶ月で見ると-8.4%となり、2020年3月来の下げです。また同指数の第2四半期のリターンでは16.5%下落、2022年の半年間で見ると20.6%の下げと米国株の投資家にとって試練の年となっています。
弱気が支配する米国株式市場
このような状況下、投資のセンチメントは引き続き弱気が支配していると言ってよいでしょう。先週、私がTwitter上で行ったアンケート(回答数:2,136)では、7月の米国株(S&P500)の見通しに対して「強気」の回答は12%だけで、「弱気」は67%、「中立」が21%という結果が見られました。
米国の個人投資家協会が1987年から公表しているブルベアレシオの強気から弱気を引いたもの、つまりネットの強気指数は現在−41ポイントと、今回の下げの局面で最も弱気になっています。この指数の1987年からの平均は7ポイントで、現在の−41ポイントレベル近くまで落ち込んだのは2009年の3月以来のことです。
2009年の3月と言うと、ちょうどS&P500が666.8ポイントで、リーマンショックの大底をつけた月です。この指数は逆張り指数とも言われています。ここまで投資家のセンチメントが悪すぎるというのは、株価が上がりやすい環境にあると言えるかと思います。
下落局面の半年後、1年後の推移から見えること
2022年のこれまでの下げは歴史的に見ても稀なことです。米国の調査会社ビスポークによると、戦後S&P500が第1四半期に15%以上下落したのはこれまでに8回しかなく、半年間でS&P500が20%以上下落したのは7回しかありません。
マーケットが下がっている中、強気になれない状況です。しかし、株式市場が過去のデータ上そのように推移した半年後と1年後を見てみると、毎回株価は上がっているのです。第1四半期でS&P500が15%以上下落した8回のその後半年後は平均で15.15%、1年後は26.07%上昇しています。半年間でS&P500が20%以上下落した7回の半年後は平均で21.47%、1年後では31.36%上がっているのです。
確率的に今後の半年後、1年後を考えると、このところの下げは買いの機会であると考えられます。
当面のマーケットのフォーカスは第2四半期の決算発表
7月に入り、米国では第2四半期の決算発表が始まります。これまでのところ、マーケットはマクロ指数の影響を受けて推移してきました。もちろん引き続きインフレの動向からは目が外せませんが、ここからの約2ヶ月間のマーケットに大きな影響を与えるのは決算発表です。
現時点のブルームバーグによるコンセンサス予想では、今回の決算は前年同期比で4%の増益となっています。たった4%か…と思われる方もいるかもしれませんが、これは1年前2021年の第2四半期は、2020年のコロナ禍に落ち込んだ分が大きくリバウンドし96%の増益だったため、ベースが高くなっているからです。ただし、4月15日時点での第2四半期の予想は6.2%でしたので、これまでに4%へと下方修正されています。これにより現在のマーケットがそれなりの業績の悪化を織り込んでいると言えるでしょう。
もちろん今後の景気動向次第で業績のさらなる下方修正の可能性は否定できません。しかし、これまでのマーケットの下げはそれが起きることの可能性を含んでの下落であると私は考えています。
今のようにセンチメントが悪い状況下において今後に対してポジティブには考えづらいでしょう。その一方では米国企業にはコロナ禍の2021年夏にも将来の成長に向けてレイオフ(人員削減)を行った企業もありますし、日本の企業と比べて柔軟な対応策をとることを躊躇しない側面があることを忘れてはいけません。例えばテクノロジー企業のレイオフをモニターしているTrueUpによると5月にはテクノロジー業界で20,130人のレイオフが行われ、6月にはさらに27,164人へと増加しているとのことです。
今回の決算発表も重要ですが、より注視すべきはマネジメントによる今後のガイダンスです。マネジメントが「良くなさそう」と言うことをマーケットは薄々と分かっており、既にそれが織り込まれていると思うものの、今後どれほど大きな下方修正が起きるかに要注意です。