人生には3つの「さか」があるといいます。上り坂、下り坂、そしてもう1つは「まさか」です。

これは資産運用にも当てはまります。

例えば、株式市場が好調な上り坂なら、誰でも株式投資により資産を増やす機会があります。逆に、マーケットが低迷し、株価が下落してしまう下り坂になれば、多くの投資家の資産は減少してしまいます。

そして、資産運用でも1番怖い「さか」は、想定しなかったような急激なマーケット環境の変化です。これこそが「まさか」です。

マーケットの変動はこれからも繰り返される

資産運用において重要なことは、「まさか」という想定外の出来事を起こらないと決めつけるのではなく、もし起こった場合どうするか、と事前に考えておくことです。

株価、為替、金利などマーケット価格の大きな変動は今まで何度も繰り返されてきました。
1987年のブラックマンデーや、2008年のリーマンショックなどは、金融関係者でさえも想定し得なかったことです。

また、2年前の新型コロナウイルス感染拡大時にも株価が一時大きく下落しましたが、その後大きくリバウンドしました。これも多くの投資家には予想外の展開です。

これからも今までと同じようなマーケットの急変動は繰り返されていくことでしょう。

地政学リスクを想定するのは難しい

金融マーケットの変動よりも対応が難しいのが地政学リスクです。

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、直前までほとんどの人には想定されていない事態でした。今もウクライナ東部での紛争は続いていますが、その先行きはまったく見えていません。

これに似た事態が、これから世界の他の地域で発生する可能性を考えておく必要もあります。

日本にとって気になるのは、中国と台湾や周辺近隣諸国との対立の先鋭化です。偶発的に軍事衝突が勃発することも想定しておくべきです。

また、北朝鮮のミサイル開発もこれから更に大きな脅威となることは確実です。日本列島に着弾というような万が一の事態があれば、資産運用だけではなく、生命の危機にさらされることもあり得ます。

更にロシアは日本沿岸でも軍事挑発行為を行っており、ウクライナだけではなく、他国との紛争を広げる可能性はゼロではありません。

私は軍事の専門家ではありませんが、専門家ですら想定できない事態がいつ起こっても不思議ではないのです。

自然災害も想定外のリスク

地政学リスクと並び、対応が難しいのが自然災害です。最近は地球温暖化の影響で気候変動が大きくなり、水害や山火事などの大きな災害が世界各地で頻発するようになっています。

日本国内にも自然災害の大きなリスクが存在します。

既に準備を進めているのが、地震対策です。東京では首都圏直下型地震を想定した避難対策などを策定しています。

しかし、都心部で大規模な火災が発生した場合や、急激に増えている高層タワーマンションの被害などは、想定以上に広がる可能性があります。

そして、私がもう1つ懸念するのは、富士山の噴火です。こちらもどのような被害が出るかを想定するのは難しく、噴火口付近の被害だけではなく、関東地区の広いエリアに火山灰による影響が出ることもあり得ます。

地政学リスクや自然災害リスクについては、過去の経験があまり役に立たないことが多く、コントロールすることが難しいと言えます。

最善を望みながら最悪を覚悟する

このような想定外の大きな変動に関しては、確率が低くても発生すれば大きな影響が出るという共通点があります。

それぞれが起こる確率を考えるのではなく、もし起こったときに自分の資産にどの程度の影響があるかの規模感をシミュレーションすることが大事です。

急激な環境変化に対応する方法は、分散投資しかありません。株式に集中投資したり、特定のエリアや通貨に資産が偏っていたりすると、逆方向に行った時のダメージが大きくなります。

資産運用から撤退していく個人投資家の多くは、集中投資による損失が原因です。無意識にリスクの取り過ぎになってしまい、逆方向にマーケットが動いたときに資産の多くを失って、投資をやめてしまうのです。

アセットアロケーションの重要性は、このような様々な最悪の事態を想定し、それでも何とか資産を守り、最終的に増やしていけるところにあるのです。

資産運用はリターンではなく、リスクから考える。これが長期で資産を守り増やすために1番大切な考え方です。

今回取り上げた様々な最悪の事態を想定し、もし起こったら現状の自分の資産にどのような影響があるのかを考えてみてください。