2022年6月中旬の中国本土市場はまちまちの動きとなっています。2022年6月6日終値から20日終値までの騰落率は、上海総合指数が+2.4%となり、香港ハンセン指数は-2.2%となっています。

上海総合指数が上昇しているのは政策期待からです。具体的には中国の李克強首相が6分野33項目から成る政策パッケージ、上海のロックダウン(都市封鎖)解除とそれに伴って「景気の回復と振興を加速する行動方案」という景気対策を打ち出したことです。

セクター別には新エネルギーやバッテリー素材などが買われた他、中国政府が条件付きで「以旧換新」や「家電下郷」などの消費促進策を奨励すると報じられたことから家電関連銘柄なども買われています。また、工業情報部は原料高やコロナ禍で打撃を受けている製造業を支援する政策を検討しているとも伝えられています。

中国人民銀行、最優遇貸出金利を据え置き

6月20日、中国人民銀行(中央銀行)は6月の最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を発表しました。予想通り、銀行貸し出しの指標金利である1年物を3.70%、住宅ローン金利の指標となる5年物を4.45%のまま据え置きとしました。既に中期貸出制度(MLF)の1年物の金利が2.85%で据え置かれていたことから、市場は最優遇貸出金利(LPR)についても据え置きが広く予想されていました。

米国ではインフレに対抗するために金利の引き上げが続いていますが、中国の5月の消費者物価指数は前年同月比2.1%増と比較的低水準のまま推移しています。それを背景に、中国人民銀行は5年物の最優遇貸出金利(LPR)を2022年1月に4.65%から4.60%に引き下げ、さらに5月には4.45%へ引き下げたことから、今後も緩やかな金融緩和が続く可能性があると考えられます。

中国の経済指標はまだ弱い状況

なお、同期間に発表された中国の経済指標を見てみると、5月のCaixin中国サービス業PMIが41.4(市場予想46.0、前月実績36.2)、5月の輸出が前年同月比16.9%増(市場予想8.0%増、前月実績3.9%増)、輸入が4.1%増(市場予想2.8%増、前月実績0.1%減)、5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.1%増(市場予想2.2%増、前月実績2.1%増)、生産者物価指数(PPI)が6.4%増(市場予想6.4%増、前月実績8.0%増)となっています。

また、5月のマネーサプライ(M2)が前年同月比11.1%増(市場予想10.3%増、前月実績10.5%増)、5月の鉱工業生産が前年同月比0.7%増(市場予想0.9%減、前月実績2.9%減)、小売売上高が6.7%減(市場予想7.1%減、前月実績11.1%減)、1~5月の固定資産投資が前年同期比6.2%増(市場予想6.0%増、前月実績6.8%増)となりました。

一部の数字は4月よりも良い結果となっていますが、まだまだ中国経済は弱い状況であることが示唆されていると言えるでしょう。

香港市場が軟調な要因

中国本土市場は堅調に推移しているところですが、香港市場は軟調に推移しています。

その要因としては、米国株が大きく下落している影響を受けていること、米国の積極的な利上げに追随して香港の金利も上昇していることが挙げられます(香港ドルは米ドルにペッグしているため)。

アリババ・グループ・ホールディング(09988)やテンセント(00700)など時価総額が大きなITハイテク株が売られており、相場の重しとなっています。なお、6月18日にはJDドットコム(09618)の創業に合わせて毎年実施されている特売セール「618」が実施され、販売額は過去最高を更新しましたが、伸び率は10.3%増と、2017年に初めてこのイベントの数字を公開して以降で最も低い伸び率に留まっています。

前述のCaixin中国サービス業PMIや小売売上高の状況を見ても、コロナ禍の影響が続く中国で消費者心理はまだ完全に回復していないことがうかがえます。もっとも、中国政府の景気刺激策によって、これから徐々に回復していく可能性があることを考えると、割安に放置されている優良銘柄は購入を検討しても良い状況にあるのではないかと思われます。