再び円安が加速し始めました。今週の為替レートは、米ドル/円で一時1ドル=133円となり、20年ぶりの円安水準です。ユーロも対円で1ユーロ= 140円台となり、円は全面安の展開となっています。

円安要因は増えている

この流れが更に続く可能性が高まっていると考えるのは、円安要因が増えているからです。

まず金利差拡大の継続です。

米国では失業率の低下から労働市場がひっ迫し、賃金が上昇するという流れを期待され金利が上昇しています。

これに対し、日本では黒田日銀総裁が記者会見で賃金の上昇が本格的に始まっているとは言えないという認識を示し、金融緩和の継続を断言しました。

円安に関しても「急激な変動ではなく安定的な円安方向の動きであれば、経済全体にプラスに作用する可能性が高い」と事実上の容認をしています。

緩やかな円安が進むのであれば、日銀としてはそれほど懸念していないということです。

米国においては、利上げと市場金利の上昇により日本との金利再拡大が続きそうです。ユーロも金融緩和から引締めに転換し、日本とは対照的な金利の動きになりそうです。

また、エネルギー価格の上昇も円安要因となり得ます。

原油を始めとするエネルギー価格の上昇は、日本の貿易赤字につながり経常収支の赤字懸念から円が売られやすくなる要因になるからです。

円高要因が少なくなっている

一方の、円高要因は少なくなっています。例えば、円安になれば海外からのインバウンド観光需要が期待できます。しかし、日本政府は外国人の入国を制限しており、本格的な回復にはまだ時間がかかりそうです。

また、「ミセスワタナベ」と呼ばれる日本の個人投資家のFXによる為替取引も、円安が進んだことで、積みあがった米ドルの買いポジションが減少しています。つまり個人投資家の米ドル買いの余力が大きく、円安を抑える要因になりにくくなっていることを示しています。

円安とは日本人が貧しくなること

日本でも大手企業の賃上げの動きがみられますが、賃上げの余力のない企業も存在します。円ベースで見ると、この20年間日本人の平均給与はほぼ横ばいで変わっていないというデータがあります。しかし、これは円で見た場合の話です。

1ドル=100円の時の1,000万円は10万ドルですが、1ドル=125円になれば8万ドルです。円ベースでは賃金がフラットでも、外貨ベースでは、賃金は下がっているのです。

外貨を持たない日本人は、気が付かないうちに円安によってグローバルで見るとどんどん貧しくなっているのです。

貧しくなったことを実感するのは海外に出かけた時の、現地での物価の上昇です。インフレによる価格上昇だけではなく、円安によって円ベースでの現地価格が更に高くなっているのです。

円安になれば海外に行こうと思う日本人は減りはじめます。国内旅行の方が割安に感じられるからです。

そして、外国人の入国規制が緩和されれば、割安な国となった日本に多くの旅行者が殺到することでしょう。日本はかつて日本人が新興国に行った時に感じたような、安い国になっているのです。

今必要なのは「日本集中リスク」を回避すること

多くの日本人は、住居も日本、仕事も日本、資産も日本(円)、言葉も日本(語)という状態で、極めて高い「日本集中リスク」を抱えています。

その中で最も簡単に日本からリスクを切り離すことができるのが、資産を円から外貨にシフトしていく資産運用です。絶対に円安になるとは言えませんが、更に円安が進む可能性も五分五分だと思うなら、資産全体の外貨比率は50%にするのが合理的です。

せめて、資産だけでも「日本集中リスク」から切り離すことを、今からでも真剣に考えてはいかがでしょうか。