モトリーフール米国本社、2022年4月19日投稿記事より

イーロン・マスクCEOがメディアを賑わしていますが、テスラに関する記事はほんの一部です。投資家が知っておくべきことをお伝えします。

最近、電気自動車(EV)メーカーのテスラが話題になっていますが、皆が考えるような理由ではありません。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)がツイッター(TWTR)に関心を寄せていることで注目が集まっており、本業とはほとんど関係のない理由でテスラが注目されているにすぎません。

既にテスラ株を保有している人や、これから購入しようと考えている投資家にとって、投資判断をする際には、ノイズとシグナルを区別し、テスラの事業に焦点を当てることが重要です。CEOの動きは確かに検討する価値がありますが、テスラ株の売買に関して、注意を払うべき要素が他にあります。

1. テスラの株式分割は見かけほど重要ではない

テスラの株主であれば、株式分割によって株価が上昇すると期待するのも無理もないでしょう。前回、2020年に株式分割を発表した後、株価は80%上昇しました。しかし、この時期はちょうど、新型コロナウイルスのパンデミックによる株価急落からの回復途上で、市場全体が強気相場であったことを忘れてはいけません。今回の株式分割をきっかけに、株価が同じように急騰するという保証はありません。

要するに、株式を分割しても、その株式が持つ本質的価値が増すわけではありません。確かに、分割によって株式数は増加しますが、それに比例して1株当たりの価値は低下し、結果的に投資の最終的な価値は同じになるのです。

2. 生産台数と出荷台数は要注目

テスラは先日、2022年第1四半期の生産台数と出荷台数を発表しました。生産台数は前年同期比69%増の30万5,407台、出荷台数は同68%増の31万48台でした。前期比(2021年第4四半期比)で見ると、生産台数は14%減、出荷台数は0.5%増でした。

この結果には2つの見方があります。前年同期比では飛躍的に成長しましたが、前期比の成長率は、2022年が厳しい年となる可能性を示唆しています。結果はいずれ分かることですが、今後数四半期はこれらの数字に注目しておく必要があります。

3. 中国で直面する問題

生産台数や出荷台数に直結するのが、テスラが中国で直面している問題です。中国国内で新型コロナウイルスの感染が再拡大していることで、中国政府はウイルスの蔓延を抑えるために厳格なロックダウン措置を取っています。テスラの上海工場は3週間近く操業を停止しており、影響は深刻です。上海工場は1日当たり約2,100台を生産しているため、生産の遅れは急速に膨らんでいます。

上海工場ではテスラ車の一部を生産しているにすぎませんが、EV業界の競争がますます激化していることを考えると、操業停止の長期化で事業に重大な影響が及ぶ恐れがあります。生産問題によって納車が大幅に遅れるようなことになれば、EVの購入を検討している顧客が競合他社に流れる可能性があります。

4. マスク氏のニュースはテスラと無関係

冒頭で述べたように、テスラは最近、事業とは関係のない理由で頻繁にニュースになっています。この数週間の間に、マスクCEOは、ツイッターの筆頭株主となり、同社の取締役になると報じられましたが、その後に就任しないと報道され、さらには現金430億ドルでツイッターを買収すると提案しました。明らかに、マスク氏の関心は広範囲に及んでいるようです。

テスラの生産能力が懸念されていることを考えると、CEOが自社の事業に十分に集中しているかどうかを疑問に思うのは当然です。投資決定において経営能力は重要な要素であり、テスラを投資対象として評価する際にマスク氏のリーダーシップは考慮に値します。

5. テスラのバリュエーションは好調な業績が続くかどうか次第

これらの要素は全て、テスラの企業としての評価に集約されます。テスラの足元の株価売上高倍率(PSR)は21倍です。直近の高値からは30%ほど低下していますが、他の自動車メーカーと比べると依然として割高です。EV分野に大規模な投資をしているフォード・モーター(F)、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォルクスワーゲン(VOW)の3社は、いずれもPSRが1倍未満です。

テスラは依然としてEV業界のトップ企業であり、割高なバリュエーションも正当化できるという見方もあるでしょう。しかし、テスラ自身の問題や競合他社の成功によって優位性が失われれば、同社を巡るシナリオはすぐに変化するはずです。

免責事項と開示事項  記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Jeff Santoroは、記載されているどの銘柄にもポジションを持っていません。モトリーフール米国本社はテスラ、ツイッター、フォルクスワーゲンの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。