臨時株主総会で両案とも否決、混乱深まる経営

3月24日に東芝(6502)の臨時株主総会が行われました。臨時株主総会では東芝経営陣が提案した東芝の会社分割案と、アクティビストとしても知られる東芝の上位株主である3Dインベストメントによる東芝の非公開化の検討およびその株主報告の2議案が議決され、そのいずれも否決となりました。簡単にまとめると以下の通りです。

【図表1】東芝の臨時株主総会の議案と結果
出所:マネックス証券

もともと東芝は2021年11月に経営陣が半導体子会社であるキオクシアと上場子会社であり、レジシステムなどを手掛ける東芝テック(6588)を保有する「東芝本体」、発電所などの「インフラ事業」、半導体やハードディスクなどを手掛ける「デバイス事業」の3事業に分割し、「インフラ」「デバイス」がそれぞれ上場する方針を打ち出していました。現在の東芝株主は東芝本体に加え、インフラ会社・デバイス会社の株主になるという3分割案です。

しかし、この方針に大株主が反発したため、東芝は2月になって東芝本体に「インフラ」は残し、「デバイス」を含む2分割案に変更することを発表、臨時株主総会に2分割案をかけました。それに対しても大株主は反対し、議決権行使機関も反対を推奨したため、上記の通り、否決される結果となりました。

一方、ファンド側の提案についても否決されており、東芝の経営は迷走色が強くなっていると言わざるを得ないでしょう。3月1日には代表執行役社長CEOと代表執行役副社長が退任しており、これらの混乱の責任をとってのことだと思われます。東芝はまさに経営が混乱している状況と言ってよさそうです。

東芝株主にアクティビストが多数存在する経緯

本連載ではこれまでも東芝の経営について繰り返し取り上げてきました。そもそも東芝株主にアクティビストなどの株主が多数存在することになった経緯について以下の記事にまとめています。これらの記事では2020年の株主総会を巡る説明を行っています。

●株主提案をめぐる東芝vsアクティビストの対立。その背景は?(2020年7月10日)

2020年の株主総会では会社側の提案が可決され、株主側の提案は否決されています。その結果については以下の記事で解説しています。

●東芝株主総会の結果とアクティビストの動き(2020年8月4日)

その後、2021年3月には筆頭株主であるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの株主提案が可決されるという歴史的な展開がありました。株主総会で会社側ではなく、株主側の提案が可決されるというのは驚くべき展開です。

●「国内最強のアクティビスト」と呼ばれるエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの投資手法とは?(2021年3月30日)

そして、2021年4月には東芝がファンドに買収されるという話が勃発します。その過程で当時のCEOが退任に追い込まれています。その経緯については以下の記事に詳細を記載しています。

●買収報道も出た、東芝を巡る動きが注目されるわけ(2021年4月13日)

●東芝“買収騒動”はトレードに活かせるか?(2021年4月23日)

なお、この買収騒動においては東芝による調査報告書が提出され、その調査報告書で上記の辞任したCEOら経営陣が株主の動きを封じようと経産省も含めて画策していたという、驚くような話が出ていました。

●東芝の調査報告書が話題になるワケ、何が書いてあるのか?(2021年6月11日)

そして、会社側と株主側の対立を落ち着かせることを期待され、2021年に就任したCEOがこのたびまたしても辞任に至ったということになります。

上記の通り、本連載では少なくとも2年に渡って東芝の経営の展開を追いかけています。会社側と株主側の対立、それに伴う経営陣の度重なる異動をお家騒動と言っていいのかは分かりませんが、ここ数年の東芝の動きはまさに迷走としか言えないように思います。

お家騒動が続くなか東芝の株価は高値圏で推移

しかし、その一方で注目すべきことは東芝の株価はこのお家騒動の期間、高値を続けているということです。この5年間で見ると、直近でも東芝の株価は高値圏にあることが分かります。

【図表2】東芝の株価の5年チャート
出所:マネックス証券

コロナ禍で下落していた時期があるものの、基本的にはこの2年間で高値圏にあるといって良いでしょう。その背景には東芝の業績がこのような状況下でも堅調であるためだと思われます。

【図表3】東芝の業績推移
出所:マネックス証券「銘柄スカウター」

インフラ事業は堅調な業績を継続しており、各事業も概ね順調なようです。そして、キオクシアという虎の子の会社も保有しています。会社側が株主を向かざるを得ない現状だと東芝の本来の底力が評価されているということでしょう。株主側は東芝の価値がさらに向上すると考えているでしょうが、少なくとも東芝の地力を見抜いて投資してきたアクティビストの目線は確かだと言えるように思います。

今回、アクティビスト側の提案が否決されたことからも分かるようにアクティビストの動きが最善ということはありません。しかし、アクティビストの動きは会社の価値を高めることにつながっているでしょう。そして、東芝の動きは投資家が特に注目すべきということを教えていると言えるでしょう。