東芝の提案がいずれも可決
7月31日に東芝(6502)の株主総会が開催されました。過去の記事でもご案内したように会社側の提案とアクティビストの提案(株主提案)が提出されていました。第2号議案から第4号議案はすべて取締役の専任に関する議案で、第2号は会社側提案、第3号と第4号は株主提案でした。
株主総会では会社側提案がいずれも可決され、株主提案はいずれも否決されました。まずは東芝の現経営陣が信任された格好となります。議決権の行使状況を見ると、会社側提案で60%を下回る賛同率の取締役がいる一方、株主提案で40%を上回る賛同率の候補もおり、会社側はひやりとする結果のようです。
もともと、東芝株はアクティビストの保有比率が大きく、会社側へのプレッシャーは小さくなかったと思います。実際、会社側は会社提案の取締役の専任議案への説明や、株主提案への反対事由を再三説明しています。子会社株を株主還元のために活用するという発表も行っています。
会社側が見せた株主への歩み寄り
また、今回の総会議案で唯一取締役専任議案ではない第1号議案は定款の変更でした。東芝の定款では配当金などの利益処分について、取締役会の決議において定めるとしていたものを、株主総会でも決議できるようにするという変更です。
一見すると株主側が提案するような内容ですが、東芝取締役会は「株主様との対話を通じて、株主様のご提案を真摯に受け止め」、会社側が提案を行ったとしています。こうした株主への歩み寄りが会社側提案の可決という結果につながったと言えそうです。今回、機関投資家等の議決権行使に大きな影響力を持つ大手議決権行使助言会社2社はいずれも会社提案の支持を推奨しており、会社側には追い風となったと言えましょう。
アクティビストが提案を続ける意義
一般的に、株主側に比べると会社側は情報やネットワークなどで大きく優位であることがふつうです。経営者は自らが経営する会社の実情を多くの情報から理解しているでしょう。また、事業に貢献しうる取締役候補のネットワークも豊富です。特に日本においてはその傾向が強いと思われます。様々な会社の経営を行うプロ経営者が多く、アクティビストなどファンドの規模が大きい米国に比べると、日本ではファンド側の影響力が相対的に小さく、提案できる取締役候補も力不足なことが多いでしょう。
しかしながら、最終的に可決されなくとも、このような提案を続けることは会社側にプレッシャーを与えます。そしてそれは会社の成長、ファンドの投資成果につながると割り切っているアクティビストも多いように思います。そういった面でも、今回の東芝の株主総会はお互いに得るものの大きかった総会だったのではないでしょうか。
総会を前にした7月30日、東芝に投資しているアクティビストの一角であるエフィッシモは東芝株を売却しました。エフィッシモが提案している取締役候補が外国投資家であり、外為法規制の対象となることを嫌ったと説明していますが、保有する株式の3割を超える売却だけに、それなりに納得いく水準で売却できたということでしょう。