FOMCの動向や中国政府の意向で急落から急反発へ

2022年3月後半の中国本土市場・香港市場は急反発となっています。2022年3月14日終値から3月25日終値までの騰落率は、上海総合指数が-0.4%、香港ハンセン指数が+9.6%です。

上海総合指数と香港ハンセン指数は3月15日に急落となったのですが、その後に急反発となっています。

3月15日に大きく株価が下げた理由は新型コロナウイルス感染者数がほぼゼロとされていた中国で感染の急拡大が続いていることが嫌気されたこと(中国はコロナ対策について引き続きゼロコロナ対策を続けていますが、ロックダウンが拡大しており、経済成長に悪影響を及ぼす可能性があるとの懸念が高まりました)や米国上場の中国株が上場廃止に追い込まれる懸念があったこと、また、ロシアが中国に軍事支援を要請したことが伝わり、欧米からの対中圧力拡大懸念も出ていたことが原因でした。

テンセント、アリババ・グループ・ホールディングなどのITハイテク銘柄から構成されるハンセンテック指数は3月14日に▲11%、3月15日に▲8%の大幅安となり2月末比で▲32%安となっていました。

しかし、3月16日に両指数ともに急反発となります。急反発となった理由は3月15日の夜に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開始され、その夜の米国上場株が、いわゆる悪材料出尽くしのような形ですでに大きく反発していたことです。

例えば3月15日の夜の米国株市場では、テンセント・ミュージック(TME)は前日比で+15%高となっています。これを受けて3月16日の香港市場も高く始まりました。

そして、3月16日の香港時間の場中に飛び出した劉鶴副首相の会合ニュースで、中国企業の米国上場を支持するといった内容や、ハイテク企業への規制強化をすみやかに完了させるという意向が伝えられると、それが起爆剤となって、3月16日日本時間の15時前くらいから、さらに一段大きく上昇していったという形です。

2022年という1年を長い目で投資の年と考える

2021年から大きく下がった中国株ですが、今回のように余りにも下がり過ぎ、総悲観状態になり、こうした時に思いもよらない予想外の上昇転換となることは、中国株では過去にもよく見られました。

ところで、3月23日付の日本経済新聞で『香港財閥、中国不動産に的』という記事がありました。新世界発展、恒基兆業地産、長江実業集団、新鴻基地産発展など香港不動産系財閥や英系スワイヤパシフィックなどが、恒大集団の経営危機の隙を突き、将来を見据えて中国の不動産を買いに動いているというものです。

昔から株式市場や不動産市場が大きく揺れて調整すると、虎視眈々と安値を狙う香港財閥の動きが伝わってきました。香港の大手不動産は、(負債の多い)中国本土の不動産企業と全く異なるバランスシートと事業構成を持っており、堅実な事業や財務を持っています。

バランスシートは強固で、いざという時に投資できるよう資金を蓄えており、高い時に買わず、安い時に大胆に投資する行動を繰り返しています。

香港財閥の考え方をヒントに中国株への投資を考えてみるのも1つの方法だと思います。もちろん地政学リスクによる欧米からの対中圧力拡大懸念などといった懸念もまだまだあるところで、中期的に見れば株価の下落はまだ続く可能性があります。

香港ハンセン指数は短期的に急反発しているものの、下向きの50日移動平均線、200日移動平均線よりもまだ下の位置にありますし、チャートを見れば中期的な下落トレンドは続いている状況です。過去にも、このような急落から急騰を演じた後、再度急落したことがあります。

したがって、例えば、秋頃に向けてもう一段の下げもありえることを意識して、2022年という1年を長い目で投資の年と考える年として、ゆっくりした目線で相場を眺めるのが良いと思います。結果が出るのは2023年以降ですが、安いところを地道に買い拾うことで、長期的には大きなリターンになりえると思います。