先週末の米国市場ではダウ平均が前日比834ドル高と上昇幅、上昇率とも今年最大となる大幅続伸を演じたが、その背景のひとつにロシアがウクライナとの停戦交渉に応じる意向を示し、紛争の長期化が避けられるとの期待が高まったことがあった。ところが、その後、停戦交渉は打ち切りとなった。ウクライナは徹底抗戦の構えを見せ、慎重姿勢だったドイツがウクライナに対する武器供与に方針を転換するなど米欧各国が相次ぎ軍事支援を強化している。

また、ロシアへの経済制裁が厳しいものにならないというのも、相場の安心材料のひとつだったが、欧米はロシアの大手銀行などを国際決済網の国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する追加の金融制裁を科すことで合意した。

こうなると、いったんは早期に終結と見られたウクライナ情勢も、まだ燻り続けることになり、先週後半に急反発した市場には揺り戻しの動きが見られるだろう。市場は再び波乱含みの展開となりそうだ。

そうは言っても、SWIFT排除も想定内で特段のサプライズではないことから、大きな売り材料ではない。たとえ欧米の軍事的支援があったとしても欧米が直接派兵しないのであれば、ウクライナとロシアの軍事力の差は歴然であり、早晩ロシアがウクライナを制圧するだろう。そうなれば、この問題はもうそれ以上進展しない。従って、相場を揺らすようなインパクトのある材料ではなくなる。落としどころが見えている以上、相場の下げも限定的となるだろう。

マーケットの焦点は米国の金融政策に再び戻るだろう。3月2~3日にはパウエルFRB議長の議会証言が予定されている。3月のFOMCを前にして議長発言に対する市場の感応度はいつにも増して高く、神経質な展開が予想される。

今週は他にもイベントが盛りだくさんだ。3月1日に中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)、財新製造業PMI、米国のISM製造業景気指数の発表がある。また同日にバイデン米大統領の一般教書演説もある。2日に国内で10-12月期の法人企業統計、米国ではADP全米雇用リポート、地区連銀経済報告(ベージュブック)、3日にISM非製造業指数、そして4日に2月の雇用統計の発表が控える。

今週からいよいよ名実ともに3月相場入りだが配当取りの動きなども相場の支えになるだろう。一方で、リクルートやエムスリーなどに下げ止まりの兆しが見られ始めたことから、ずっと売られてきたグロース株の底入れ期待もある。3月のFOMCが潮目の変化となるか、重要な月の始まりである。