パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント(以下、パーシング・スクエア)は、著名投資家ビル・アックマン氏が率いるアクティビストで、運用資産は約131億ドル(2020年11月時点)です。フォーブスの記事によると、アックマン氏の保有資産は31億ドルと試算されており、同氏は米国で368番目の富豪となっています。
この記事では、アックマン氏の投資戦略について解説します。
2020年7月にSPAC(特別買収目的会社)を組成
アックマン氏は2020年7月にSPAC(特別買収目的会社)のパーシング・スクエアトンティーン・ホールディングスを上場させて40億ドルの資金調達を行ない、過去最大のSPACとして話題になりました。
2021年6月に、パーシング・スクエアトンティーン・ホールディングスは世界最大の音楽会社であるユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)の株式10%を、親会社の仏メディア大手ビベンティから40億ドルで取得する計画を発表しました。
しかし、投資の仕組みが複雑であったことから投資家の支持を得られず、またSEC(米証券取引委員会)からもSPAC規定に違反する恐れがあることを指摘され、取得を断念。アックマン氏の主力ファンドである パーシング・スクエアがUMG株を取得することになりました。
そして、2021年8月10日にパーシング・スクエアがUMGの7.1%を親会社の仏メディア大手ビベンティから取得したことを発表。取引額は28億ドルになりました。
コロナ禍において高いパフォーマンスを達成するも2022年は厳しいスタートに
パーシング・スクエアの2020年の運用成績はプラス70.2%、2019年もプラス58.1%と2年連続で過去最高を記録しました。
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大によるマーケットの混乱で、多くのファンドが運用に苦しみました。そんな中、同社はスターバックス(SBUX)やアジレント・テクノロジーズ(A)、ヒルトン・ワールドワイド・ホールディングス(HLT)などに資金を多く振り向けていきました。一方、ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャー・ハサウェイなどの銘柄を売却しました。
2月19日付けのロイター記事によると、「アックマン氏のチームは、新型コロナウイルスの流行に対応するため、1年半前からリモートワークを続けている。同氏は2018年の晩餐会で、投資家に会うため、世界中を飛び回る働き方をやめると表明。新たなアイデア構築に時間を割く方針を示していた」とのことです。また、「アックマン氏の投資チームは全員男性だったが、同氏は女性のマニング・フェン氏が年内にパーシング・スクエアに加わるとも表明。フェン氏はウォーバーグ・ピンカスのプライベートエクイティ・アソシエートを務めた経歴がある」と書かれています。
2021年もプラス27%と好成績をあげましたが、2022年は厳しいスタートとなりました。FRB(米連邦準備制度理事会)が3月にも利上げを開始するとの観測が強まり、地政学的な混乱もあって米国株式市場が下落したからです。米主要株価指数であるS&P500は2022年1月に5.23%下落しましたが、アックマン氏のパーシング・スクエアは8.2%のマイナスと、S&P500をアンダーパフォームしました。
ネットフリックス(NFLX)の株式を大量購入
パーシング・スクエアは依然として、積極的な投資を続けています。1月25日に、アックマン氏は決算発表後に株価が急落したネットフリックスの株式を、310万株購入したことを明らかにしました。
ネットフリックス株は1月20日の決算発表後の5日間で30%も急落。S&P500の2022年のパフォーマンスワースト銘柄となっていました(2022年1月時点)。
ネットフリックスは、新型コロナウイルス感染拡大の当初、巣ごもり需要の拡大で会員数が急増。世界の会員数の伸びは、2020年第4四半期で前年同期比21.9%増となりました。しかし、2021年の第4四半期は前年同期比で8.9%増となり、伸び率が急減したことが嫌気されたためです。
しかし、アックマン氏はネットフリックスの月額料金の値上げや業界をリードするコンテンツを高く評価し、株価が下落した時点で大量にネットフリックス株を購入しました。これにより、パーシング・スクエアはネットフリックスの株主の上位20位以内に入りました。
ネットフリックスの株価は1月26日に359.70ドルまで下落しましたが、2月18日時点で391.29ドルまで上昇しています。アックマン氏が率いるパーシング・スクエアが株式を大量購入したネットフリックスの今後の動向に注目したいところです。