日本語に訳すると「有形固定資産」です。要は目に見えにくい金融資産(そのためマネーゲームなどと言われることもあります)と異なり、「実物」が伴う資産のことです。
投資目的の有形固定資産といえば、不動産を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。ですが日米では不動産投資市場はようやく回復の兆しが見えつつもまだ好転とは言い難い状況にあります。
今回取り上げる「固定資産」は主に美術品です。
そもそも美術品を「投資対象」にすると聞くと日本のバブル期に猫も杓子も絵画などの美術品を買いあさって話題になったことを思い出す方もいらっしゃるでしょう。その後のバブルの崩壊に伴い、日本でいまだに美術品を購入されている方は本当に美術に興味があり、審美眼を持つ方などが中心と思われます。
某競売会社に勤める友人から、最近の欧米における「美術品投資」の動きについて興味深い話を聞きました。新聞などで記事をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。最近のThe NY Timesでも特集されていました。
今年に入り、欧米の美術品市場が過熱しているというのです。競売会社の主催するオークションでは落札額の記録更新が相次いでいるようです。一枚何十億円とする絵画(欧州巨匠のものから現代ポップアートまで)がポンポンと売れているそうです。
有形資産ということで、たとえば金塊などで何十億円分ともなればすごい分量になってしまいますよね。でも絵画であれば一枚で済む、というのもその投資熱の理由の一つだということです。
買い手はコレクターとして有名な欧米の富豪はもちろんですが、中国やブラジル、アジア各国からの資金流入もかなり大きいとのこと。
いち早く経済回復を見せ、同時にそうした新興国地域に急速に「大金持ち」が増えていることの表れですね、美術品といった文化的なものに対する消費(需要)というのは人々の生活水準が上昇して初めて拡大してくるものです。今は大金持ちのコレクターの動きかもしれませんが、そうした興味の裾野が広がっていくことは考えられます。日本のバブル期の様相を示している感もあり、ちょっとその過熱ぶりは心配な気もしますが・・・。
世界各国が金融緩和に走り、あふれたマネーの行き先として株式市場に注目することが多いのですが、こうした美術品市場にも多くの資金が流れ込んでいるということですね。
The NY Timesの記事は競売会社の責任者の「美術品市場の強さの要因として、人々が有形なものへ資金投入したがっていることにある」というコメントで終わっています。
まだまだ先進諸国は景気回復の途上にあり、厳しい経済環境が続く中、これはごく一部の「金余り」の人々の現象なのかもしれませんが、今後の新興国マネーの動きを占う上でもこうした投資行動にも注目しておきたいですね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー
CFP(R)、(社)日本証券アナリスト協会検定会員