いよいよドル円のドル史上最安値(=「円」の史上最高値、1995年4月 79円75銭)の更新という歴史的瞬間を目にすることになりそうですね。

95年当時は最安値を付けた後、相場は劇的に反転していきました。
そのときと現在は何が異なるのでしょうか?

1.当時は「円高」

現在も円高ではないか・・・という声も聞こえてきそうですが、当時は日本の巨大な貿易黒字が日米の貿易不均衡問題として米通貨当局が攻めていました。「円」を買うことが市場でのテーマだったのです。現在は「ドル安」です。またユーロなど他の通貨にしても通貨安政策を強めており、その消極的選択として円が受け皿になっているに過ぎません。世界の市場において「円」を買うことをテーマにしているわけではないのです。ちなみにアジア通貨では現在は中国人民元の動きの方が注目されていますよね。

2.通貨安競争

先進諸国がこぞって自国通貨を低く誘導しようという政策を行っています。いかに効果的に市場に対してアピールできるか、政策の規模やタイミングを図っています。
為替レートは組み合わせの2通貨が同時に高く(低く)なることはありません。どちらか一方がより高く(安く)なることで変動します。
通貨安に誘導する政策というのは、一般に金融緩和です。まずは政策金利を低くし、市場に通貨を多く供給することで需給面からも金利を低くしていきます。金利が低いことは通貨の魅力を下げることにつながりますから、それにより通貨は売られやすくなるのです。
95年当時はすでに利下げを繰り返している只中ではありましたが、まだ下げ余地のある水準で、市場にメッセージを伝えることができました。
ところが現在はすでに10年以上にわたって超低金利政策が継続中で、今回実質ゼロ金利に再突入したものの、そのインパクトはほとんどありません。金余りに慣れ切った市場にいくら資金を供給(量的緩和)しても投資喚起にもつながりにくいのです。

3.介入の効果

95年、米国では就任して間もないルービン財務長官(当時)による政策転換がありました。「強いドルは国益である」という声明を繰り返し、同時に後に「ミスター円」と呼ばれる榊原国際金融局長(当時)と日米協調介入を繰り返しました。
現在、日本は数度単独介入したものの、中国の通貨操作の手前、G7において先進諸国から介入という手段を容認・歓迎されず、防衛ラインと思われていた82円を割って円高がすすんでも再度の介入をできずにいます。
単独介入で効果をあげるのは、サプライズと大規模、そして継続あるのみですので、頓挫してしまっている状況といえますね。

こうなると、日本は「次のカード」がないと言えます。
米国の景気回復、それによる出口戦略への方向転換、もしくは市場が円を受け皿にすることに興味をなくすことしか本格的な反転のきっかけはないかもしれません。
とりあえず、市場は未知の下値を探りたいという動きを続ける可能性はありますね。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー