ウィズ・コロナが標準シナリオ
国際通貨基金(IMF)は10月の世界経済見通しで2022年の世界経済成長率を+4.9%と予測した。2021年より若干鈍化するものの、好不況の目安とされる+3%を大幅に上回る。
コロナ禍による経済の落ち込みを穴埋めするため、欧米などの先進国は史上最大規模の財政・金融措置を続けており、それを考えると、2022年も高めの成長となる公算が高いと言える。
一方、新型コロナウイルス感染症はまだ収束が見えない。直近では10月中旬を底に再び世界の新規感染者数は拡大しており第6波を迎えようとしている。
しかし、足元ではワクチン接種の進展やマスク着用の定着などで大規模なロックダウンの導入に至らない、いわゆるウィズ・コロナの国が増えており、感染拡大による世界経済の下押し圧力は一定程度軽減される可能性が高いと考えられる。
ゼロ・コロナを目指す中国
比較的高い経済成長を続けてきた中国は、新型コロナウイルスが発生するまでの10年間では世界成長率の約1/3に貢献し、その影響力がすでに米国を上回る。しかし、コロナ禍以来中国の景気減速が目立ち、2022年の成長率もIMFが予想した+5.6%を大きく下回る公算が高い。
最大の下振れ要因は、厳格な感染対策だ。中国はゼロ・コロナを目指しており、小人数の感染でも大きい地域を封鎖し、感染の封じ込めを最優先している。それが人流や物流の停滞を招き消費の回復を阻害している。
2021年の年初と8月に大規模な封鎖措置が導入され、国内旅客輸送はコロナ前の2019年に比べて6割以上落ち込んだが、その時の新規感染者数は平均で1日辺り50~60人程度だった。
2022年2月に北京冬季オリンピック、3月に新年度国家予算を採択する全国人民代表大会(国会)の開催を控える中、海外で新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大を受け、その感染対策の強化は避けられない。
そのため、サービス分野をはじめ国内消費の回復が後ずれすることが、2022年の経済成長を押し下げる最大の要因と言える。
中国の成長率低下は一時的か
その答えは、おそらくノーである。中国人民銀行は、2021年3月のワーキングペーパーで中国の潜在成長率が2025年にかけて5.1%へ低下する方向と試算し、成長率の低下が続くとした。
経済成長率を構成する全要素生産性(TFP)は横ばいの見通しだが、労働投入の減少とともに資本ストックの伸び率も鈍化する見通しだ。
特に、労働力の源泉である生産年齢人口(15―64歳人口)はすでに減少局面に入っており、成長率へのマイナス寄与は次第に拡大、中期的に▲1%前後に達する可能性もある。生産性向上に寄与してきたとされる農村から都市部への労働者移動も近年低下している。
総じて、短期的なゼロ・コロナ政策のみならず、中国のこうした中期的な潜在成長率の低下も意識される中、中国経済への依存が大きいASEAN諸国をはじめとする世界経済や、資源エネルギー価格への影響には留意が必要だ。
コラム執筆:李 雪連/丸紅株式会社 丸紅経済研究所 シニアアナリスト