政治、政策が市場に与える影響が大きいことは皆さんよくご存じですよね。相場変動は、本当に様々な要因が複雑に絡み合うことによって起こりますので、一つだけが原因とは言えないものです。ですが、その時々に市場がもっとも敏感に反応する「テーマ」というものがあります。

先週米国が打ち出した金融規制案は、米国はもちろんのこと、日本市場にも大きな影響を与えています。(オバマ・ショック)先週からの米国、日本の市場動向は、この政策が大きな「テーマ」であるといえるでしょう。

リーマン・ショック以降、世界の経済は目指すところが同じでした。もちろん経済の回復です。ですから、その政策はある意味分かりやすくもありました。各国とも金利を下げ、市場に資金を大量に供給、特別な優遇税制を置くという景気刺激策を行ったわけです。

その結果、昨年1年間で世界では景気回復が軌道に乗りつつあると見受けられる経済指標も多く出るようになりました。
ですが、ご存じのとおり、現在のように経過途中にある経済状況においては、その回復は一部の国、地域であったり、業種であったり、もしくは同業種であっても規模の大小によって、ペースや状況が全く異なっています。米国でもゴールドマンサックスが過去最高益を記録した一方で、他の米金融機関は業績足踏みや赤字状態といった具合に、同じ国の同じ業種の企業でもひとくくりには語れないですよね。

そんな状態のときの政策のかじ取りというのはもっとも難しいでしょう。こちらに対応すれば、あちらが立たず・・・といった感じで。(日本は残念ながら全く上手くいっていませんね...。)一つの経済政策が出されたとき、得する人、損する人の二極が極端に出やすい状況だということです。誰がトクをするのか・・・これを見極めることができれば、市場全体が動揺しているときでも、いえ動揺しているからこそ、好機にもなりえるといえるでしょう。

さて政治・政策の報道が必ずしも市場のテーマとならないこともあります。よく今の政権で経済は大丈夫でしょうか、という質問をいただきますが、日本の場合はそもそも政治・政策への信認が薄いのか、すでにあきらめ感が織り込み済みなのか大きくマイナスの影響がみられることは少ないですね。

今回は政策を打ち出したのが米国、しかも世界金融の自由化を主導してきた国の方向転換だけに世界へ衝撃を与えているのです。

ちなみに要人発言も同様で、市場の信認の厚い要人のコメントであれば、市場は動きますが、
「この人、またこんなことを言ってる」
「この人は市場をよくわかってない」
といった烙印を押されてしまうと、市場にとっては「要人」ではなくなってしまうこともありますのでご注意を。

廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー