日本が出遅れてはいたものの、持ち直しつつあった世界の株式市場は軒並み大幅下落、為替市場もドルやユーロなどが急落しました。
こうした大きな値動き、とくに急落という場面においても個人投資家にとって大きくリターンを得られるチャンスが為替市場、つまりFX取引にあります。株式も「売り」から入ることが可能な商品ではあり、すなわち下落時にリターンを得ることはできるのですが、慣れない人にとってはちょっとハードルが高く、コストも大きいといえるでしょう。
為替は2通貨間のレートですから、ドルやユールが売られるという下落局面の反対側で、円の急上昇があったということです。上昇と下落が1セットになっている商品ですよね。どちらの通貨を買い、どちらの通貨を売るかでポジションができるわけですから、株式を売る、買うというスタンスとは異なり、初心者にも「売り」から入りやすい商品です。
コスト面でも、円以外の通貨(円は引き続き、世界で最も低金利です。現在は米ドルもほぼ同様ですが・・・)をショートするときは、ポジションを翌日以降に持ち越せば日々コスト(スワップポイント)がかかります。ですが、その日で手仕舞う、もしくは長期にショートを続けない限りは各国間の金利差の小さくなった今、大きなコストになりません。
そのうえ取引毎の手数料はかからないところが多く、BID-OFFERのスプレッドも小さくなっている昨今では、手軽に取引できる代表商品ともいえますよね。・・・と、今さらいうまでもなく、個人投資家の皆さんはこのチャンスを見逃すことなく、FX取引は非常に活発に行われていた模様です。
さて、ここでFX取引を積極的に行っている方にぜひ注意していただきたいことがあります。当然のことですが、マーケット・トレンドの変換期を見逃さないようにすることです。
為替市場は下落するときのスピードは非常に速く、事実1995年4月の80円割れをつける瞬間までの急落はすさまじいものでした。こうした場面ではディーラーも一斉にショート・ポジションを作り、それがまた下落を呼ぶという連鎖となります。
ご存じのとおり95年には、協調介入により円安方向に是正され、その立役者として当時、榊原財務官はMR.YENといわれました。
このとき、いつまでもショート・ポジションにこだわったディーラーは大きく負けることとなりました。
「市場が試したがっている」といういい方をするときがあります。
急落している場面において、例えば95年でいえば80円割れを試したい、という状況です。80円割れが記録されたのである意味「お腹いっぱい」になって、素直に円高是正に従ったともいえるかもしれません。
今回の円高も、「市場がどこで満足するか」という点を見極める必要がありますね。
今回の円高は「円を買う理由がある」というよりは、他の通貨を保有していることのリスクから逃避するための消極的な選択です。他の通貨に対する過剰なまでの危機感がおさまれば反転する可能性も否めません。
ただ、95年時のような日本主導の強い介入は期待しにくい状況でもあります。
市場が85円割れで納得したのか、もう一段下、過去最安値まで試したいのか、このあたりの判断は本当に難しいと思いますが、ここまで円高が進んでいる中、マーケットの後追いをしすぎると火傷の元となりますので、FX取引をされる方はオーダーを置くなどの手当てを万全にして、十分注意してくださいね。
廣澤 知子
ファイナンシャル・プランナー