みなさん、こんにちは。岸田ショックから一時はどうなるかと思った日経平均ですが、ここに来て持ち直してきました。

岸田総理が分配よりも成長に軸足を置く方向にシフトチェンジし、金融所得課税も強化方針も凍結としたことで市場には安心感が広がった模様です。衆議院議員総選挙も遂に始まりましたが、このような岸田総理のスタンス調整を見る限り、「選挙は買い」の相場格言はしっかりと機能しているように感じています。

コロナ禍の鎮静化も追い風となっています。自民党総裁選時につけた高値にどれだけ迫れるか、が当面の焦点となるでしょう。

徐々に回復しつつある消費マインド

そこで今回は「リベンジ消費」を採り上げてみたいと思います。とはいえ、実は同じテーマを半年前のコラムでも既に書いています。この時も緊急事態宣言が全国的に解除されたことで、これまでの我慢の反動として消費が盛り上がる、という視点から注目産業をまとめたものでした。

そこでは、短期的には外出を楽しむような外食やファッション関連、旅行関連などがまさにリベンジ消費の中核を担うと予想するものの、息の長い消費という観点では、情報機器・日用品など在宅生活を充実させる商品や高額商品に注目したいと結論づけました。

この時はすぐにまた新規陽性者(新型コロナウイルス感染者)数が増加してしまったためにリベンジ消費はかなり期待外れとなりましたが、不動産を含む高額商品の消費は今に至るまで急拡大しており、これは当時の見立て通りとなりました。

今回、一日の国内新規陽性者数は現在1,000人を大きく下回り(8月下旬は約2.5万人でした)、コロナ禍はかつて以上に「沈静化」してきたという印象も浸透しています。そのため、今回こそリベンジ消費が期待できるのではないか、と考えています。

現在のところは、緊急事態宣言解除とはいえ、飲食店やイベントなどはまだ時間や集客数に一定の制約がかかっている状況です。消費者も在宅生活への慣れもあり、これまでの我慢を発散させたい思いはあるものの、一足飛びにコロナ前の生活に急転回という状況でもないようです。コロナ第6波を警戒しつつ、消費マインドは徐々に癒されていくということなのでしょう。

戦略の転換が重要となるGo To 政策

そこで起爆剤となるのが Go To 政策と位置付けます。2020年夏から秋にかけて実施されたGo To トラベルやGo To Eatが消費を大いに刺激したことは記憶に新しいところです。

(衆議院議員総選挙の結果如何に関わらず)現在の水準の感染状況が続いている限り、新政権は何らかの経済対策を打つはずと考えれば、2020年に中断して予算を残しているGo To 政策の再開は極めて現実的かつ手堅い景気刺激策になるでしょう。

2020年の実施では当初は東京発着が対象外になり、オンラインでの予約にも混乱が生じるなどはありましたが、これらの問題を解消緩和して再開すれば今後はより裾野の広い消費を喚起できるのではないかと予想します。観光業などへのメリットは大きなものが期待できるのではないでしょうか。

消費マインドが盛り上がってきた場合は、やはり飲食店やファッション関連への注目度が上がると考えます。すっかり縁遠くなってしまった飲み会や食事会といった会合も、久々に行けばやはり楽しいものであり、情報交換や相手との親交を深めるには非常に有効な手段であることを改めて再認識します。

そのような機会の増加はサービス業における雇用の拡大にも繋がるため、景気へのインパクトは計り知れないものとなるはずです。苦戦を強いられてきた外食サービス産業やファッション産業は、このような消費マインドの回復にはしっかり対応したいところでしょう。

ただし、コロナ前と同じ発想ではかつてのような顧客を確保できるかどうかは覚束ないかもしれません。この2年間でやはり消費者の考え方や価値観が変化してしまったかもしれないためです。

これは私の考え過ぎかもしれませんが、コロナ禍により働き方に対する考え方は不可逆的に変わったように思います。サービス業は人手不足対応などその業務効率を含め、誰にどう訴求するかという戦略面での大きな転換点に差し掛かっていくのではないかと考えます。

インバウンドのリベンジ消費にも注目

そして、究極的なリベンジ消費はインバウンドであると位置付けます。現時点での訪日観光客数は、極めて低い水準のまま変化はありません。日本入国には一定期間の隔離が求められることもあり、観光目的などで日本を訪れるにはかなりハードルが高いというのが現状と言えるでしょう。

しかし、ワクチンパスポートの導入などが進み隔離政策が緩和されれば、訪日観光客の回復も期待できると予想します。リベンジ消費を志向する消費者は国を問わないはずですから。かつてのような爆買いの再来までは期待しませんが、日本ならでは、という商品への関心はかつてと変わらず根強いものと考えます。

ただし、それもこれもコロナ禍が世界的に沈静化してくることが大前提になります。ワクチン接種の浸透や経口薬の開発も進捗しているものの、変異株が出てくればそれも元の木阿弥となってしまいかねません。

リベンジ消費を目論んでの投資も、状況をしっかり見極めて柔軟に対応することが最低条件となるはずです。「まだ」は「もう」なりですが、「もう」はまた「まだ」なりであることもお忘れなく。