金利が経済に大きな影響を与えていることは皆様ご存じのことと思います。各国の金融政策はそれぞれの市場を動かし、相場の方向性が決まることも多いのが事実です。

ところが実際のところ、金利は私たちの生活の中では「わかりにくいもの」の代表でもあるようです。「経済に影響を与えるもの」とは知っていても、具体的にどういった値動きをして、他の市場とどういった相関関係にあるのか、というと今一つピンとこないという方もいらっしゃるでしょう。

そもそも金利市場は個人投資家が参加できるものではありません。そのため金利と聞くと、預貯金の金利、債券のクーポン、そして住宅ローン金利をイメージされることが多いと思います。実は生命保険などの保険も金利がベースになっているもので、金利は生活の見えないところにも確実にかかわっています。
金利は株式市場や為替市場にも影響を与えていると前述しましたが、その動きについては慣れることで感覚的に捉えられることができるようになってきます。もちろん勘に頼って売買をすることを勧めているわけではありません。
ニュースなどを耳にしたときに、瞬間的にどちらの方向に相場が向かうのかを感じ取る訓練を積むことが速い判断を必要とする相場展開の中では役に立つと思います。

一般的に金利が上がるとどういったことが起こるでしょう。瞬間的にイメージしてみてください。

・預貯金などの金利も上がり、金利商品の魅力が増す 

     → 投資家にとっては金利商品が魅力的になってくる 

     → 株式などから金利商品に乗り換える

・企業などの借入コストが上がる = 企業の業績に影響を与える

     → 有利子負債の多い企業などの業績懸念につながる

                    ⇒ 株価下落

・景気回復=金利上昇 という発想から  ⇒ 株価上昇につながることも
・保有通貨としての魅力が増し、通貨が買われる ⇒ 為替レート上昇  
・急速なインフレ防止のための利上げ 

   → 通貨への不安が連想され ⇒ 為替レート下落につながることも 
同じ金利上昇という局面においても、上記のように市場の反応は正反対になることもあります。それは金利のニュース以外で、為替市場から株式市場への影響の方が強かったり、その逆もあるからです。お互いに作用しているため、当然のことながら金利からの影響だけではないということですね。反応するタイミングも各市場異なることも理由の一つです。

また景気回復などを背景にした「良い金利上昇」と急速なインフレ、赤字国債大量発行など将来への不安などからくる「悪い金利上昇」と金利の動きのきっかけそのものが正反対の場合もあります。(短期金利の動きか、長期金利の動きか、など。)

かえってわかりにくくなってしまいましたでしょうか?
まずはニュースを聞いて、「良い金利の動き」か「悪い金利の動き」かを判断し、各市場を見るようにしてみてください。
市場の動きは複雑ではありますが、相互作用しながら、理由をもって動いています。
明確な理由(自身で納得できるもの)をもとに各市場を見ていくことが、相場を読んでいくことにつながっていくものだと思います。

ご自身が投資している株式市場だけ、為替市場だけといった見方をせずに金利(金融政策)を含めて総合的に判断していくことをぜひお勧めしたいと思います。

廣澤 知子

ファイナンシャル・プランナー