中国恒大集団を巡る見解

10月前半の中国株は上昇となっています。9月30日終値から10月15日終値の騰落率は上海総合指数が+0.1%、香港ハンセン指数が+3.1%となっています。

上海総合指数は小幅上昇といった程度ですが、チャートは非常に綺麗な形となっていて、200日移動平均線で株価が反発し、その後株価は50日移動平均線や100日移動平均線に沿うように横ばいとなっています。ちなみに、各移動平均線共に上向きです。

一方、香港ハンセン指数は大幅上昇となっていますが、こちらもチャート的には底打ちを示しつつあります。2021年2月をピークに、中国当局の規制強化や中国の不動産開発大手である中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)(03333)の債務問題によって下落トレンドを続けてきた香港ハンセン指数ですが、足元のチャートは9月21日と10月5日をダブルボトムとする形のチャートとなっています。

この後、50日移動平均線を株価が上抜けてくればトレンド転換と言えるところまで来ています。

香港ハンセン指数が大幅上昇となった理由は大きくわけて3つあります。1つは中国恒大集団の債務問題について、中国当局が大きな問題には発展させないと何度かメッセージを送っていることです。

これについては前回のコラムでも解説した通り、既に9月末に中国当局が介入して指導を行い、秩序ある整理を行う方針を示唆していました。

直近では中国人民銀行(中国の中央銀行)が10月15日に中国恒大集団の問題が金融システム全体に波及するリスクは制御可能だとの認識を示しています。

また、明報(香港で発行される繁体字中国語の日刊新聞)が同日、外電を引用して伝えたところによると、中国の金融監督管理当局が9月末に、一部の大型商業銀行に対して窓口指導を行い、10-12月期に個人向け住宅ローンの貸し出しを加速させるよう求めたとあります。

このような背景から、中国恒大集団の問題で中国の不動産市場が崩壊するような事態には発展しないと予想されます。

ITセクターが大きく反発している理由

2番目、3番目の理由はITセクターに関するものです。2つ目の理由は、チャーリー・マンガー氏が率いるデイリー・ジャーナル(DJCO)が7-9月期に中国政府の規制強化懸念で株価が大きく下落しているアリババ・グループ・ホールディング(09988)を買い増したことです。

デイリー・ジャーナルは7-9月期にアリババ・グループ・ホールディングの米国預託証券(ADS)13万6,740ADSを追加取得しました。9月末時点での保有数は30万2,060ADSとなっており、四半期ベースで82%増えたことになります。保有残高は6月末の3,700万米ドルから9月末には4,500万米ドルに増加しています。

チャーリー・マンガー氏は「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が率いる投資持株会社、バークシャー・ハサウェイの副会長です。

ウォーレン・バフェット氏は、投資家に「他の人が恐れているときは貪欲になる」ようにアドバイスしていますが、今回のアリババ株購入はそれを地で行く投資をしたことになります。このニュースをきっかけにアリババ株が大きく上昇した他、その他のIT株も大きく上昇しています。

3つめの理由は、大手生活関連サイト運営の美団(03690)に国家市場監督管理総局が独占禁止法違反で34億4,200万元の罰金を科したことです。罰金が科せられたこと自体は良くない材料ですが、アリババ・グループ・ホールディングには同じ理由から182億元の罰金が課せられており、美団には40億元以上の罰金が科せられるとの見通しもあったところでした。

つまり予想よりも少ない罰金であったために、同社の株価は発表後に、いわゆる悪材料出尽くしで上昇しており、株価は100日移動平均線を上抜け、直近の高値であった9月の高値を超えてきました。チャート的には底打ちを強く感じさせるチャートとなっています。

ともあれ、これらの理由からテンセント(00700)など他のIT大手企業の株価も上昇しました。もちろん、今後、中国当局からさらなる規制強化が発表されれば株価は再び下げに転じてしまうわけですが、2月をピークとして続いていた下落トレンドが一旦は収まる方向に転じたと考えても良いところまできたと期待できます。