電力制限問題で中国経済に懸念
9月下旬の中国株は軟調な動きが続いています。9月17日終値から9月30日終値の騰落率は上海総合指数が-1.3%、香港ハンセン指数が-1.4%となっています。
上海総合指数は9月14日には一時3,723ポイントまで上昇しましたが、その後、調整が続いています。9月29日には200日移動平均線手前まで株価は下落してきたのですが、そこから少し反発しているところにあります。
もっとも、上海総合指数は200日移動平均線も50日移動平均線も緩やかな上向きで、株価も9月30日には50日移動平均線を再び上抜けています。一方、香港ハンセン指数は200日移動平均線も50日移動平均線も下向きで推移しており、株価は両移動平均線からさらに下方にあります。
ただ、9月中旬は調整したものの、9月21日を底にする形でその後は横ばいで底打ちが始まっているようにも見えます。
9月下旬は全体的に株価が軟調となっている印象で、これまで堅調だったインフラ投資関連や消費関連の株価も調整した銘柄が多くあります。これは中国の電力制限問題が影響しています。
石炭価格の上昇で電力の販売価格に上限が定められている発電所が発電量を減らしています。また、2021年のエネルギー強度(一定の国内総生産を創出するのに必要なエネルギー量)を3%削減する目標を中国当局が定めていることから、一部の産業は政府によってエネルギー使用量が削減されました。これらによって中国では計画停電が行われている状況です。
2020年4月以降、世界経済が新型コロナショックから回復するにつれ、世界の工場である中国では工場の稼働が増えていたわけですが、ここにきて電力制限問題が出てきたことで、中国経済に下押し圧力がかかるのではないかと懸念されています。
例えばJPモルガンはこのペースで2021年末まで電力不足が続いた場合、中国の10-12月期GDP成長率は1ポイント押し下げられるとの予想を出しています。
不動産セクターは反発し、石油セクターも強い動きに
その一方で、同期間に大きく上昇(反発)した銘柄は中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)(03333)を巡る混乱から下落していた、その他の不動産株です。
9月17日終値から9月30日終値の騰落率で碧桂園服務(06098)は+23%、碧桂園(02007)は+15%、華潤置地(01109)は+15%となっています。
これは中国当局が中国恒大集団に介入して指導を行い、秩序ある整理をする方向を示唆したことによります。また、それに伴い、9月27日に中国人民銀行が中国の不動産市場の健全な発展を守り、法律で認められた住宅購入者の権利を保護していく方針を表明したことにもよります。
もちろん、中国恒大集団を救済するわけではないので一定の痛みは出るわけですが、業界全体へ危機を波及させるようなシステミックリスクは防ぐとしているわけですので、余波で一緒に下落した不動産銘柄に買戻しが入ったわけです(なお、10月4日から香港市場で中国恒大集団は寄り付きから取引停止となっています)。
その他、同期間で上昇したセクターは原油価格上昇から石油関連株(中国海洋石油(00883)の+7.8%など)があります。
世界的な脱炭素の流れで(金融機関や保険会社は石油や石炭開発に対する融資や取扱を減らしており、投資家は議決権を行使して脱炭素の経営に圧力をかけています)、世界の大手石油企業の石油採掘設備への投資が激減しています。そのような中で、コロナ禍からの世界経済の回復があり、構造的に原油が不足気味の状況が原油価格を押し上げています。
石油開発への投資は数年単位で何兆円もの資金を注いで行う必要があり、急激には改善できない見通しであることから、この傾向はもう少し続く可能性があると見ています。